秋好院長ブログ
冷え症 その5
投稿日:2017年8月8日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について, 脊柱管狭窄症, 閉塞性動脈硬化症について
動脈にも静脈にも異常がない場合には血流低下はないといったんは考えて差し支えありません。
では何に問題があると思いますか?
一つの可能性は神経です。
人間の感覚は神経に支配されています。
末端の受容器で刺激を受取り、末梢神経を伝わり、脊髄を登っていき、最後に脳で認識します。
この流れのどこかで神経に圧迫が加わわると、神経はその上流で痛みがあるかのように錯覚を起こします。
例えば、脊柱管狭窄症では腰に異常があるのに、足に痛みが生じます。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbar_spinal_stenosis.html
脊柱菅狭窄症では神経が原因で足がしびれる、痛い、じんじんするなどの症状が生じます。
血管外科を受診される患者様で脊柱菅狭窄症を持っている方は沢山います。
一方で、脊柱菅狭窄症と診断されている患者様で、血管が原因で症状が生じている方も沢山います。
私がこれまでに勤めてきた病院でも整形外科からのご依頼が最も多かった印象です。
「足が冷える」と訴える患者様の多くが神経と血管の複合的要因で症状が出ていることが多いようです。
高齢者は複数の病気を抱えていることが普通です。一度に全部を完全に治すことはできなくても、ひとつずつ治して、少しでも症状が軽くなって生活の質が落ちないようにすることが大事だと思います。
それでは動脈、静脈、神経にも異常がなくて、それでも症状がある場合はどうなるのでしょうか?
スギ花粉免疫療法を行う時期
投稿日:2017年8月2日 カテゴリー:お知らせ, 免疫療法
Q:スギ花粉免疫療法を行う時期はいつがいいですか?
A:今でしょ!
古いネタですね。かなりベタです。なんのひねりもありません。
書いていて自分で恥ずかしくなりました。
ここからは真面目な話です。
免疫療法によるスギ花粉症治療にはそれなりの時間がかかります。
免疫療法ではスギ花粉に対する免疫寛容導入を試みるわけですが、放射線や化学療法などによる骨髄破壊を除いて、免疫寛容を即時導入する方法は現時点ではありません。
外来で安全に行うためには少量から徐々に慣らしていく必要があります。少なくとも半年はかかると思ってください。
スギ花粉が飛び始める時期から余裕をもって逆算すると「今でしょ」なのです。
スギ花粉が飛び始めてスギ花粉症になってから導入を試みてもまず効果はありません。
むしろスギ花粉症を増悪させる恐れがあります。
効果がないとなると健康保険の問題も生じるかもしれません。日本の保険医療では「安全でかつ確実な効果が期待される医療行為」しか認められないことが多いためです。
というわけで、真面目に「今でしょ」なのです。
冷え症 その4
投稿日:2017年8月2日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 冷え症について
血流低下が「ない」場合にはなにが考えられるのでしょうか?
一般に血流が悪いというと動脈血流(足に入ってくる血流)の低下を考えます。
では、「足から血流が抜けなくなる場合はどうなるの?」と思いませんか?
足から血流を抜くのは静脈ですので、この場合は静脈系の異常になります。
足の静脈系は大きくわけて2つに分かれます。
筋肉の奥深くを走る深部静脈系と皮膚のすぐ下を走る表在静脈系です。
深部静脈系の異常で代表的なものは深部静脈血栓症、表在静脈系の異常で代表的なものは下肢静脈瘤です。
(実際には動静脈瘻などもっと色々とありますが、それはひとまずはおいておきましょう。)
静脈系の異常では足は冷えません。しかし、「冷え症」で来院される患者さんのかなりの割合で静脈系に異常が見つかります。
静脈系に異常があると、下肢に血液がうっ滞(血液が足に溜まる)して、足が重い・だるい・じんじんするといったことが置きます。こういった症状を「冷える」と考えたり、表現する方が多いようです。
うっ滞がひどくなると皮膚炎を起こして皮膚が黒ずんでもきます。さらには潰瘍(皮膚がえぐれる)まで引き起こすこともあります。
当院でも下肢静脈瘤を何年も放置してうっ滞性潰瘍になってしまった方がいらっしゃっています。
下肢静脈瘤は命に支障はありませんが、皮膚炎や潰瘍になってしまうと生活の質ががくんと落ちます。
また、足がだるく・重くなるので、高齢者の杖歩行の原因となっていることがあります。
下肢静脈瘤の手術は随分と進歩してほぼ間違いなく外来で治せるようになりました。
手術時間も30分程度であり、傷跡も採血や点滴の跡に毛が生えた程度です。高齢者でも問題なく受けることが出来るようになりました。
なかには「下肢静脈瘤は死なない病気だから、治療する必要はない」と昔の知識で仰る方もいますが、それはもはや時代遅れの考え方かもしれません。
高齢者にとっては生死よりも軽い足で明日を快適に過ごすことの方が大事なのです。
冷え症 その3
投稿日:2017年7月27日 カテゴリー:お知らせ, 冷え症について, 閉塞性動脈硬化症について
冷え症を診察する上で最初に動脈血流の低下をチェックします。
動脈血流が低下すると下肢に新しい血液が供給されなくなるので、実際に下肢の温度は低下します。特に完全に血流がなくなった場合(重症虚血)には、足を触ると氷のように冷たくなります。
動脈血流が低下する原因としてはざっと以下のようなものが考えられます。
閉塞性動脈硬化症
下肢動脈塞栓症
Blue toe症候群
バージャー病
膝窩動脈外膜嚢胞
膝窩動脈捕捉症候群
膝窩動脈瘤
大動脈弁狭窄症
などなどです。ほとんどの患者さんは聞いたことがない病気ばかりだと思います。他の科の医師の多くも知らないと思います。
ほとんどの患者さんは「冷え症=血流低下」と思い込んでいますので、実際に血流低下があるかを確認することからスタートします。実際に血流低下があるような場合にはその原因を探ることと治療を開始します。なかには重症の血流低下があって、早期の手術が必要な患者さんもいるので、最初に血管外科で診断を受けるのが大事です。
では血流低下が「ない」場合はどうするのでしょうか?