血管外科とは
血管外科とは血管の病気を扱う専門家です。
その範囲は文字通りに全身に及び、扱う血管の種類も動脈、静脈、リンパ管にわたります。「血管外科」という科には馴染みがないと思いますが、「血管内科」という科に至ってはそもそも存在しません。「循環器内科」という科が近い存在ですが、日本の循環器内科は伝統的に心臓が専門であり、血管をあまり扱ってはきませんでした。このため、日本の血管外科医は診断や内科的治療(薬による治療)も担当しています。
血管外科医は珍しいの?
珍しいです。
全国に血管外科を標榜している医師は200名程度しかいません。
よく似た科として心臓外科がありますが、異なる科と考えてもよいと思います。
全身に血液を回すシステムを循環器といいますが、これは心臓と血管から出来ています。心臓はポンプの働きをしています。血管は水道管のような働きをしています。心臓外科は心臓を治すのが専門で例えるならばポンプを治すボイラー屋さんのような存在です。血管外科は血管を治すのが専門で水道屋さんのような存在です。水道管のことをボイラー屋に相談する人はいないのが普通ですが、医療の世界では専門ではない科の医師が静脈瘤の治療を行うことがあります。医療は内容があまりにも高度であるために、一般の方には違いがわからないことが最大の原因です。もう一つは極端に数が少ない血管外科医の専門医資格が「心臓血管外科専門医」として心臓外科と統合されている日本独特のわかりにくい制度が原因です。
下肢静脈瘤の専門家はどの科なの?
血管外科です。
日本の下肢静脈瘤治療を統括する静脈学会は血管外科医の先達によって創設されています。
また、下肢静脈瘤の手術がストリッピング術しかなかった時代にはほとんどのストリッピング術が血管外科医によってなされていました。下肢静脈瘤治療に他科の医師が参入するようになったのはごく最近のことです。そもそも下肢静脈瘤の診断・治療・手術法は整形外科や皮膚科の教科書にはもちろん心臓外科の教科書にもほとんど書いてありません。
下肢静脈瘤の治療はレーザー治療の登場によって身近となり、手術数も激増しました。しかし、血管外科医の数があまりにも少ないために、専門家以外によって治療されるケースが増えたのも事実です。トラブルを防ぐためにも実績のある血管外科医によって運営されるクリニックできちんとした説明・治療を受けることを勧めます。