下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤は一部の人々が煽るような危険な病気ではありませんが、たしかに手術でしか治りません。しかし、血管外科医の手術を受ければ楽にきれいに良くなります。
下肢静脈瘤とはふとももやふくらはぎの血管がぼこぼこと膨らむ病気です。膨らんで見た目が悪くなるだけでなく、そこに血がたまってしまうことによって足がだるくなったり、色が黒ずんだり、皮膚が壊死してえぐれてしまうよう(潰瘍)になります。こうなってしまうと手術をしないと症状が改善しません。
下肢静脈瘤は自然には治りません。また、薬で治すことも出来ません。これは下肢静脈瘤の本質が伏在静脈の静脈弁の物理的破壊だからです。静脈弁は一度壊れるとどうにもならないのです。このような静脈は悪さをするだけなので、とってしまうか、塞いでしまうしかありません。
当クリニックでの静脈瘤治療について
静脈瘤の治療法はおおきく四つに分けられます。
1.レーザーやラジオ波による焼灼術
この方法では静脈瘤の原因となる伏在静脈を発熱するファイバーカテーテルを用いて内側から熱で焼き潰して塞いでしまいます。このときに発熱に使われる手段がレーザーやラジオ波です。
レーザーやラジオ波による焼灼術の特徴は傷が残らないことです。針を使ってカテーテルを静脈内に挿入しますので、終わった後は絆創膏で済みます。膝下のぼこぼことした血管はそこだけ針穴程度の傷をつけてくるくると巻き取ります。この傷も数ヶ月でほとんど目立たなくなります。
また、ストリッピング術と比べて痛みがずっと軽いのも特徴です。 手術翌日から普通に立ち仕事が出来るので自営業の方でも気軽に手術を受けることが出来ます。
2.ストリッピング術
この方法では静脈瘤の原因となる伏在静脈内にワイヤーを通して引き抜きます。ストリッピング術は長い歴史を持ち、あらゆるタイプの静脈瘤に対応する方法がすでに確立されています。
残念ですが、レーザー焼灼術が登場してから静脈瘤について学んだ一部の医師はストリッピング術が不得手あるいはそもそも出来ないために、無理な焼灼術を施行して再発を招いているようです。焼灼術では良好な効果が期待出来ないタイプの静脈瘤には当院では最初からストリッピング術をおすすめしています。
3.硬化療法
この方法ではボコボコとした血管内に硬化剤を注入した後に外から圧迫を加えて血管内腔を糊付けして膨らまないようにする方法です。 この方法のメリットはうまくいった場合は傷跡も残らず、痛みもありません。デメリットは硬化剤が血管外に漏れた場合の潰瘍や黒ずみ、血管内に血栓を形成した場合の痛み、高い再発率です。
4.スーパーグルー治療
スーパーグルー治療は血管内に瞬間接着剤を注入して固めてしまう方法です。硬化療法を発展させた治療と言えます。硬化療法は高い再発率が難点であり、現在はあまり行われなくなっていますが、スーパーグルー治療では非常に高い効果が期待されています。
また、レーザー治療と比べてもさらに痛みが少なく、手術に伴うダウンタイムや生活制限もほとんどありません。ただし、新規治療の常として長期成績や長期副作用が不明であり、複雑な形態の下肢静脈瘤を治療することも困難です。
全ての下肢静脈瘤をスーパーグルー治療で治療することはできませんが、適切な症例を選択すればとても良い治療です。
この4つの治療方法の全てを出来るのは血管外科医のみです。 当院では全ての治療を日帰りで行っています。例外的に複雑な成り立ちの静脈瘤、他に重い病気をお持ちの方、不安でどうしても入院を希望される方は近隣病院へ紹介したうえで院長が赴いて手術を行います。
オーダーメイド治療について
院長の経験では9割以上の患者様が1か2の選択肢のどちらかを選択されます。残りの1割の患者様では下肢静脈瘤の状況と患者様の希望に応じて、オーダーメイドで手術を組み立てます。定型的なレーザー焼灼術やストリッピング術の患者様よりカウンセリングと説明のための外来が1-2回ほど多くなってしまうかもしれませんが、検査も手術も全て保険でカバーされますので安心してください。実際のお支払いはレーザー焼灼術やストリッピング術とほとんど変わりません。
当クリニックでの下肢静脈瘤日帰り手術治療の流れ
1.全身検査
下肢静脈瘤でいらっしゃってもご病気は下肢静脈瘤だけとは限りません。下肢静脈瘤と思い込んでいても、そうではないこともあります。
本当に下肢静脈瘤なのか、他に病気が隠れていないかを徹底的に検査します。
2.下肢静脈瘤を徹底的に検査
下肢静脈瘤の分布や成り立ちをエコー、CT等でしっかり調べます。
下肢静脈瘤のなかには手術をしてはいけない静脈瘤や複雑な成り立ちの静脈瘤もあります。きちんと検査をして最適な治療方針を策定します。
1.と2.をしっかりとやって手を抜かないことが、血管外科専門医と静脈瘤だけしかできない医師の大きな違いです。
3.手術
当日は局所麻酔で手術をします。(歯を抜くときと同じ麻酔です。)
手術後はご自分で歩いて帰れます。バスや電車に乗ることも可能です。ご自分で運転して帰ることは避けた方が無難です。
シャワーは翌日から可、湯船につかるのは一週間後から可です。
4.術後フォローアップ
焼灼した静脈がきちんと焼き潰れているか、合併症が起きていないかをきちんとフォローアップします。ほとんどの患者さんは問題ありませんが、念のために術後すぐを含めて定期的に超音波検査でチェックします。
5.卒業です!
一年経って、きちんと良くなっていること、追加手術が必要ないこと、合併症がないことを確認して卒業です。
最後に
下肢静脈瘤には家族性があることが経験からわかっています。卒業後も今回は手術が必要なかった方のご自分の足に静脈瘤が生じたときやご家族に下肢静脈瘤が生じたときには遠慮なくご相談ください。