下肢閉塞性動脈硬化症とは
動脈硬化とは「全身の血管の壁が年をとってしなやかさを失って硬くなること」と理解して貰うとわかりやすいと思います。硬くなるだけでなく、壁が壊れたりすることによって、血管が詰まったりしてしまいます。血管が詰まると、その下流の臓器(脳や心臓など)は酸素不足で窒息壊死してしまい心筋梗塞や脳梗塞などを起こしてしまいます。
下肢に分布する血管が動脈硬化を起こすことを下肢閉塞性動脈硬化症と呼びます。足に分布する血管が詰まってもよほどの事がないとすぐには壊死しません。まずは、足が冷たくなる(冷感)、しばらく歩くと足がかったるくなって立ち止まってしまう(間欠性跛行)といった症状が出てきます。この段階で早めに治療を開始することが大事です。この段階であれば、ほとんどの場合で生活改善や内服治療、せいぜい簡単なカテーテル治療で解決出来ます。この段階で治療には入らないと、何もしていなくても足が痛む(安静時痛)、足の指や踵が腐りだす(組織欠損)といったことが起こります。こうなってしまうとバイパス治療や複雑なカテーテル治療が必要になります。また、入院期間もとても長くなります。感染などがかぶった場合には切断することが必要になることがあります。とにかく早めに受診することが大事な病気です。
当クリニックでの閉塞性動脈硬化症の治療について
下肢閉塞性動脈硬化症の治療手段
下肢閉塞性動脈硬化症の治療手段は大きく分けて3つあります。
1.生活習慣改善・内服治療
動脈硬化は生活習慣病でもあります。同じ年齢の患者さんでも喫煙歴や糖尿病や高血圧や高脂血症の有無によって動脈硬化の程度は大きく異なります。このため、生活習慣を改善して動脈硬化の進行を遅らせることが重要になります。生活習慣改善は一朝一夕では出来ません。当院では根気強い取り組みをお勧めしています。
内服治療として抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)の内服が必要になります。抗血小板薬内服の目的は足の症状の改善だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞の予防としての意味もあります。抗血小板薬には沢山の種類があり、それぞれの作用機序は異なります。効果や半減期はどれも同じというわけではありません。それぞれの患者さんの状況に応じて適切な選択や調節が必要になります。
2.カテーテル治療
内服治療の効果が不十分な場合にはカテーテル治療やバイパス治療といった手術を行います。また、緊急性がある場合や内服治療の効果が出るまで待ちきれずに急いで症状を改善したい患者さんも手術の対象になります。
カテーテル治療は患者の体力的負担が少なく、入院期間も2泊3日で済みますので、外科的治療の第1選択肢となります。カテーテル治療では詰まってしまっている血管にトンネルを掘って内側から膨らませます。そのままだとすぐにトンネルがまた詰まってしまいますので、内側から金属で出来た骨組み(ステント)で支えます。
カテーテル治療は術者の力量に大きく左右される治療です。当院では近隣の病院や大学病院で間違いの無い医師を直接に指名して紹介しています。
3.バイパス治療
つい10年前までは内服治療やカテーテル治療が未発達だったために全ての治療はバイパス治療で行っていました。従って、究極的にはバイパス治療で全ての状況に対応できます。ただし、全身麻酔が必要で大がかりなことや傷が大きく痛みが強いことが難点です。緊急性が高いときや切断を回避するために確実な効果を得たい時には最初からバイパス治療をお勧めするときもあります。
当院では3つの選択肢を適宜組み合わせ、ガイドラインを参考にしつつ、それぞれの患者さんの置かれた状況にあわせた「さじ加減」を加えて、患者さんに提案します。近隣の病院との役割分担も意識して、入院治療は病院で行い、術後のフォローアップは小回りのきく当クリニックで担当することも可能です。