秋好院長ブログ
6月が終わりました。
今日で6月の最後の手術日が終わりました。今月も全件で無事故で手術が終わって良かったです。
ただ、反省点もありました。
6月は繁忙期で患者さんが殺到するので、外来枠等の調整である程度は準備していたのですが、それをはるかに上回ってしまいました。
結果として、スタッフにかなりの負担がかかったのはもちろんですが、私自身も外来でかなりあたふたしてしまいました。
もともと外来予約数を通常の医院の半数程度とかなりしぼってあり、一人あたりの時間を長めに設定してあります。しかし、予約外の患者さんが押し寄せると収拾不能になってしまいます。改めて予約をとって来ていただくようにご案内しているのですが、遠方からいらっしゃっている患者さんではそうもいかず、「きちんと説明したい」という気持ちと生来のせっかち故の「早くしなきゃ」という気持ちでごちゃごちゃになってしまいました。毎日、夕方になるとくたくたでした。まだまだ修行が必要なようです。
一部の予約患者さんにはご迷惑をおかけしたと思います。この場を借りてお詫びしたいと思います。
また、電話、ネットのどちらでも結構ですので、予約をとってから来院することを皆様に改めてお願いしたいと思います。
手術は万全の体調で余裕を持ってできるように午前中いっぱいを割いていますので、安心していただいて大丈夫です。
こちらは無事故記録を更新中ですのでご安心ください。
静脈瘤は「治療不要」というのは本当なの? その2
投稿日:2018年6月21日 カテゴリー:下肢静脈瘤について
「治療不要」と言われた下肢静脈瘤に治療が必要となるのは、ずばり、皮膚炎や色素沈着が生じた時です。
皮膚炎や色素沈着と言われても、一般の人はわからないと思いますので、噛み砕くと、
皮膚炎=皮膚の炎症。痛み・かゆみや皮膚のえぐれ(潰瘍)を生じる。
色素沈着=皮膚に色がつくこと。黒ずみやシミになる。
となります。いずれも静脈圧の上昇による血球の漏出、ヘモジデリン(鉄分)の沈着がその成り立ちであり、静脈瘤としてかなり重症であることを示しています。
いずれの状態も放置すればどんどん悪くなる上に、治療後も治るのに時間がかかり、また多くの場合で痕を残すので、皮膚炎や色素沈着が少しでもあったら治療する方がよいと思います。放置した時のデメリットが大きすぎますので、当院ではきちんと説明して手術を強く勧めます。
次に、治療が絶対に必要とまではいえないけども、手術するメリットが大きいのは、足がだるい、重い、つるといった時です。
静脈瘤があると静脈圧が高くなって以下のような症状が出てきます。
一日中立っていると、夕方には足が重くてたまらなくなる。
常に足がだるくて歩くのが辛い。
足がじんじんする。
朝方に足がつって起きてしまう・夜眠れない。
このようなケースでは、手術をするとかなり足が楽になります。夜中に足がつって寝不足になっていた患者さんは寝られるようになったと喜びます。
昔は手術が大変で、入院が必要、全身麻酔や腰椎麻酔が必要、ダウンタイムが長くて仕事を休む必要があるといった理由で弾性ストッキングでしばらくごまかしておく、というのが現実的な選択肢でした。そもそも専門医は遠い都市部にしかいないので、現実的に無理でした。しかし、現在は20分程度の日帰り手術が当たり前ですので、距離も仕事もほとんど問題になりません。治療するメリットが治療しないデメリットを大きく上回ってしまいますので、患者の立場になれば手術をあきらめる理由はありません。保険でももちろんカバーされます。
こういったケースでは当院では「辛いのであれば手術を考えた方が現実的です。手術を待つ場合、皮膚炎や色素沈着が少しでも出てきたならすぐに連絡をください。」と説明しています。
専門クリニックは手術・治療だけがお仕事なのではなく、啓蒙や経過観察も大事なお仕事です。
静脈瘤で死亡することはまずありませんが、重症化すると長く苦しむことになります。
まずは専門医を受診して、自分の静脈瘤がどの程度なのかを判断してもらってから様子を見るのがいいと思います。
静脈瘤は「治療不要」というのは本当なの? その1
投稿日:2018年6月13日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
刺激的なタイトルですが、重要な話です。
この半年間で小田原・湯河原・熱海方面から静脈瘤が重症化した人が数多く来院されました。重症のうっ滞性皮膚炎で足が真っ黒になった人や皮膚がえぐれて潰瘍になっている人たちが何人も来ました。一昔前までは平塚からもそのような患者さんは年にぽつぽつといましたが、最近は珍しくなっています。
いずれの患者さんも「かかりつけの先生に見てもらったときに治療不要と言われたからほっておいた」「同じように静脈瘤を持っている知り合いが治療不要とかかりつけの先生にいわれたから自分も大丈夫だと思った」と、過去に「治療不要」と言われたとおっしゃいます。
かかりつけの先生のおっしゃっていることは決して間違いではありません。ただし、それは「静脈瘤は決して自然には良くならない、じわじわと進行する、最後には皮膚炎や潰瘍となって痕が残る」ということを見落としています。皮膚炎や潰瘍になってから静脈瘤の治療をしてもなんとか治りますが、時間がかかる上に医療費はかかります。率直にいって、ほんとーーーーーーっに大変です。重症の下肢静脈瘤の治療を自分でなさったことのない方にはわからないと思います。
もう一つのファクターとしては過去の教科書にはそのように書いてあったからです。昔の静脈瘤の治療は全身麻酔・腰椎麻酔の手術で一週間入院はざらでした。傷も大きく、傷跡も残りました。メリットとデメリットを比べると、相当の重症でない限りはメリットがデメリットを上回りません。昔の教科書にはそのように書いてありました。しかし、レーザー治療の発達によって静脈瘤の治療は大きく変わりました。現在の静脈瘤治療は局所麻酔、日帰り手術、傷跡は針穴が当たり前です。我々のような静脈瘤専門家にとっては当たり前のことですし、海外の最新のガイドラインにはきちんと載っていますが、日本のほとんどのかかりつけ医は知らないはずです。残念ながら日本の一般的な教科書の多くはそこまでキチンとは書いてないのが現実です。
そうはいっても、かかりつけ医側にしてみれば、「治療不要」と伝えたのは10年以上前の話であって、状況が変わったのなら改めて相談に来るべきだという言い分になります。一方で患者側にしてみれば、「治療不要」と言ったのが悪いということになります。これは理解の乖離としか言いようがありませんが、どちらが悪いというわけではなく、人間同士のコミュニケーションの限界なのだと思います。
当院ではきちんとエコー等で検査をした上で手術の対象となる静脈瘤がその時点で存在するかを正確に判断します。また、現時点で治療対象となる静脈瘤がない場合には、そのまま帰すのではなく将来の見込みについても説明し、どのような症状が現れたら再受診をするべきかを説明します。遠方からいらしていて、周囲に専門クリニックがない状況の患者では、そこまでしないとのちのちに重症化させてしまうからです。
次回は、どの時点になったら下肢静脈瘤専門医(=血管外科医)を受診したほうがいいか、についてお話します。
6月11日休診
6月11日は月に一度のリフレッシュ休暇のために休診とさせていただきます。
働き方改革が論議されていますが、多くのクリニックは少数精鋭のためなかなか難しいのが現実です。
「他人の健康に責任を持つためには、まず自分の健康に配慮しなくてはいけない」という考えのもと、当院では開院当初より月に一度は連休をとって心身ともにリフレッシュすることを心がけています。また、医療従事者が積み重ねた経験や技術が継続的な労働を通じて世の中にきちんと還元されるためにも、医療従事者こそきちんと休むべきと考えています。
ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いします。
静脈瘤の血管を焼いても大丈夫なの? その3
投稿日:2018年5月28日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 血管外科について
今回は下肢にある太い静脈についてです。
下肢の静脈には皮膚表面に分布する表在静脈と筋肉の奥深くを走行する深部静脈に大きく分けられます。表在静脈は皮膚表面を走っていて、皮膚の色が薄い人は透けて見えます。これに対して深部静脈は筋肉の奥深くを走っているので表面からは触れないし、見ることも出来ません。さらに表在静脈と深部静脈は無数の細い血管で交通しています。平行に走る縦の太い線の間を無数の横線がはしるようなあみだくじのような構造を想像してもらえるとよいと思います。
さて、この表在静脈と深部静脈の太さにはどれくらいの差があるのでしょうか?かなり個人差はありますが、直径でいうと3倍から5倍はあります。面積でいうと9倍から25倍です。例えれば、表在静脈は1車線の道路、深部静脈は9車線から25車線の道路ということになります。
下肢静脈瘤は表在静脈に出来ます。静脈瘤が出来ている表在静脈を焼き潰したり、切除したら、そこを流れている血液はどうなってしまうの?どこを流れるの?というのが一般の方には不思議でならないようです。
これは簡単なことで、表在静脈を流れていた血液は表在静脈と深部静脈を交通させている細い静脈を通って深部静脈に流れ込みます。もともと細い血管を流れている血流量ですから大したことはありません。深部静脈で受け止めることは十分に可能です。
1車線の道路が渋滞して排ガス問題がひどいからとその道路を潰しても、近くに25車線の道路があれば地域全体としては交通は維持されます。それと同じことです。
下肢静脈瘤の術前には必ず超音波検査をします。これは深部静脈が開存していることを確認して、表在静脈を焼いても大丈夫なことを確認しているのです。