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湘南平塚下肢静脈瘤クリニックブログ

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秋好院長ブログ

エコノミークラス症候群と血栓性静脈炎

下肢静脈瘤と足の痛みシリーズが中断したままです。

次は内科関係で下書きを書いているのですが、簡潔に書くのが難しいので難航しているわけです。内科は医療の根幹をなしているいるため、範囲が膨大で絞り込むのが難しい。

 

そのなかでこれだけはというのが今回のエコノミークラス症候群と血栓性静脈炎です。

 

下肢静脈瘤に関する質問のなかで最も多いのは、「血栓」です。とにかく血栓に関する質問が多い。

結論から言うと「静脈瘤の中に血栓ができることはありますが、それとエコノミークラス症候群はほとんど関係ない」ということです。

 

静脈瘤の中に血栓が出来ることを血栓性静脈炎と言います。血栓性静脈炎の症状としては発赤、激しい痛みが主です。本当に痛いです。

この血栓が肺に飛ぶことを恐れる人が多いわけですが、肺に飛ぶことはほとんどありません。なぜならば下肢静脈瘤は曲がりくねっているので、どこかで引っかかってしまうからです。どこかで引っかかって詰まってしまうと血栓を乗せて運ぶ血液の流れそのものが無くなってしまうので動かない、飛ばないということになります。逆に詰まっているので圧が高くなって痛みが強くなるのです。

 

ではエコノミークラス症候群ではなぜ飛ぶのでしょうか?エコノミークラス症候群で血栓が出来る静脈はそもそも下肢静脈瘤とは異なり、はるかに太くて血流量も多い静脈(大腿静脈、腸骨静脈など)です。したがって、出来る血栓のサイズも違えば、血栓を乗せる血流のパワーもレベルが違うわけです。

 

交通事故に例えればバスやダンプカーによる交通事故と自転車による交通事故を同列に論じるようなものです。どちらも道路交通法違反には違いないと思いますが、明らかにサイズが桁違いのものを同列に扱うのは暴論です。

 

エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)で痛みが出ることもありますが、むしろ少ないと思います。エコノミークラス症候群の過半数は全くの無症状であり、ケロッとしています。一方で、突然死となることもあります。中間の症状が少なくて、無症状と突然死と結果が極端なのがエコノミークラス症候群の特徴であり、恐怖感の原因となっています。この恐怖感のために血栓性静脈炎とエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)の混同が起きてしまっているようです。

 

血管外科専門クリニックの当院としてはなるべくこの誤解は解きたいと思ってます。したがって、そのような質問があると上のような説明をするのですが、なかなかわかってくれないのが現状です。恐怖感に囚われている人に論理的な説明の理解や理性的な判断を求めるのは酷かもしれません。できれば落ち着いている時にこの記事を読んで安心してもらえるとよいと思います。

 

厳密にいうと下肢静脈瘤と肺塞栓症には相関関係があることが報告されています。ただし、アジア人における肺塞栓症の発生率は欧米人と比べて10分の1以下ともともとがとても低い上に、下肢静脈瘤と肺塞栓症との間の因果関係は解明されていません。したがって、日本においては肺塞栓症の予防のために下肢静脈瘤手術を勧めるのは良心的とはいえません。相関関係と因果関係の違いを説明すると非常に長くなるので割愛しますが、「東大生にはチョコレートを食べる人が多いから、チョコレートを食べると東大に受かる」と言っているようなものです。冷静な人だったら、それが嘘だということは直感的にわかりますよね?

 

冷静に考えればわかることも、恐怖に囚われている時には論理的な判断ができません。そのような判断を代わりにしてあげることも、我々の仕事です。

ネット上に玉石混交の情報やフェイクニュースが溢れるからこそ、専門医はきちんとした啓蒙を行う必要があると思います。

 

なかなか理解が広がらないのがもどかしいのですが、きちんとした理解をせめて地元では広めていきたいと考えています。

クリニック概要

医院名 湘南平塚下肢静脈瘤クリニック
診療科目 内科・血管外科
住所 〒254-0043
神奈川県平塚市紅谷町14-20 FT共同ビル3F
TEL JR東海道・湘南新宿線「平塚駅」北口・西口より
徒歩3分
電話 0463-74-6694
休診日 日曜日、祭日、土曜日午後
診療時間 日・祝
9:00~
12:00
13:00~
18:00

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