秋好院長ブログ
レーザーと高周波治療、どちらがよい?
投稿日:2017年10月26日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 当院での治療例
今回は患者様から質問があったので、レーザーと高周波治療どちらがよいか?という話題です。
院長は市民病院時代に高周波治療を行っていましたが、現在は波長1470nmのレーザーのみを使用しています。両方を使った経験からいうと、波長1470nmのレーザーに軍配があがります。あくまでも私見ですが。
市民病院時代に高周波治療を導入したのは、当時は旧式の波長980nmのレーザーしかなかったからです。旧式の波長980nmのレーザーと比べると高周波治療に軍配があがります。波長980nmのレーザーは痛みも強く、再発率も高く、率直にいってストリッピング治療の方がずっとましなのではないかと思うぐらいです。旧式の波長980nmのレーザーは今となっては使われていないと思います。
現在主流の波長1470nmのレーザーは術後の痛みもほとんどなく、再発もほとんどありません。当院の初期300例では24時間以内に伏在静脈は完全閉塞しています。
では、波長1470nmのレーザーと高周波治療にはどのような違いがあるのでしょうか?
1.焼く温度
高周波治療では約120度に温度をコントロールしながら焼きます。これに対して波長1470nmのレーザーは約1200度です。この温度の違いのために高周波治療の方が痛みが少ないという主張をする向きもありますが、実際に使って比べてみた感想としてはほとんど差はありません(笑)。なぜならばどっちもほとんど痛くないから。統計上でわずかに違いはあるようですが、実感として大差ないと思います。
2.カテーテルの太さ、硬さ
高周波治療カテーテルとレーザーカテーテルを実際に見比べればわかりますが、圧倒的に高周波治療カテーテルの方が太くて硬いです。レーザーカテーテルの方がずっと細くてしなやかです。このためカテーテル挿入時の痛みや傷跡は高周波治療の方が大きくなります。また、太くて硬いカテーテルでは曲がりくねった伏在静脈にはうまく入らないことがあります。院長自身も何度か市民病院で苦労した経験があります。
3.術後の閉塞率
これに関してはほとんど変わりません。波長1470nmのレーザーの方が優れているという意見もありますが、院長自身の経験ではあまり変わらないようです。
まとめると、
波長980nmのレーザー<<<<<<高周波治療<<波長1470nmのレーザー
です。
あくまでも私見ですが、両方使った経験からはそう思います。当院も高周波治療を併用しようと当初は考えていましたが、あまりにも波長1470nmのレーザーがいいので現在はレーザーしかやっていません。また、ストリッピング術もほとんどやっていません。高周波治療だとカテーテルが通らないケースなどでストリッピング術が必要なケースもあったのですが、レーザーカテーテルが使いやすいためにそういうこともなくなった次第です。
パワーアップ計画進行中
投稿日:2017年10月25日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
もうすぐ開院6ヶ月です。この間に700人以上が受診し、300例以上の手術を行いました。
全例を院長が担当しています。
もともとこの地域の中核病院で血管外科をやっていたので、医療事情は承知していたつもりだったのですが、開業してからはクリニックと病院では医療事情が異なることがわかりました。
当院の治療プロトコールは中核病院血管外科での経験と静脈瘤クリニックの先輩方の経験のハイブリッドでした。これもいいプロトコールだったと自負していますが、想定外の状況もありました。
例えば、
「自転車に乗って手術を受けに来ていいですか?」
「収穫の合間に手術をしたい」
「手術後いつから筋トレしていいですか?」
中核病院では入院手術がメインだったので、自転車の問題は経験しませんでした。ところが平塚の高齢者は自転車移動が多いので、日帰り手術では大事な問題なのです。
収穫の問題は先輩方のクリニックでも想定されていませんでした。多くの日帰り手術クリニックは都内もしくは横浜駅付近などの都市部にあるためです。
筋トレの問題は完全に想定外でした。とりあえずだめと言っとけばいいのかもしれませんが、せっかくついた筋肉が落ちてしまうことを考えるとそういうわけにもいきません。己の未熟さを悟りました。
こういった経験を盛り込んでより幅広い患者様に対応出来るように治療プロトコールを磨いています。
早速ですが、術前と術後の説明文書を改訂しました。患者様のなかには一回目と二回目の手術で説明ややり方が違うと戸惑う方もいると思います。
状況に合わせて小回り良く対応していくこと、どんな患者さんでも同じように治療を受けられるようにやり方を常に磨くことが専門クリニックの使命なのです。ご理解いただければ幸いです。
日帰り手術のメリットとデメリット
投稿日:2017年10月11日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 当院での治療例
日帰り手術にはメリットとデメリットがあります。
メリット、デメリットそれぞれを列挙して考えてみましょう。
メリット
1.入院がいらない。
当たり前ですが、入院は要りません。介護している家族を預ける必要はないし、デイサービス等の手配をする必要もありません。仕事を休むのも半日で済みます。手術当日午後からいきなり肉体労働はしないほうがいいと思いますが、簡単な事務仕事は問題なく可能です。
2.医療費が安く済む。
日本の社会保障費は膨張を続けており、医療費抑制は政治的課題となっています。入院の場合の医療費は「手術手技料+入院費用」となっています。これに対して、日帰り手術では「手術手技料」だけで入院費用分を節約できます。当然ながら、保険組合側と患者側の支払い分は大きく減少します。
3.治療内容は入院と変わらない
日帰り手術だから入院治療と内容が変わるということはありません。手術の内容は全く変わりません。また、当院の特徴として診断、手術、フォローアップまで一人の医師(院長)が担当します。病院のように複数の医師が役割分担で担当することにも意味はありますが、静脈瘤の治療の場合には一人が担当する方がメリットは大きいようです。
4.自分自身の手術を見学することが出来る。
実話です(笑)。希望者限定ですが、目隠しを外してご自身の手術を見学することができます。手術は15分程度で終わってしまうので、大掛かりな全身麻酔は行いません。意識があるので、ご自身の手術を見学することも可能です。(あくまでも希望者限定ですが。)現在の医療は患者側の想像を超えていますので、事前にいくら説明しても完全にご理解いただくのは難しいのが現実です。百聞は一見にしかず。ご自分でご覧になるのが一番です。
5.術後すぐにベイスターズグッズを買いに関内へいける。
これも実話です(笑)。手術終了後にその足で関内へ行かれました。術後に生活制限はほとんどありません。術後に控えていただくのは正座・蹲踞(そんきょ)のような膝を曲げる姿勢を長時間とること、事故を起こした時の賠償責任問題を避けるために運転を控えることだけです。それ以外にはなにもありません。手術当日夜にいつも通りに8000歩も歩かれた方もいます。
6.手術翌日にバドミントンが出来る。
これまた実話です(笑)。静脈瘤の程度や手術の内容によりますが、術後の痛みはチクチクとした痛みだけのことがほとんどです。傷口も針穴程度ですので、すぐにシャワーを浴びることが出来ます。湯船につかるのは一週間程度は控えておきましょう。
デメリット
1.仕事を休めない
仕事を休まなくていいのはメリットではありますが、考え方は人それぞれです。日帰り手術を理由に一ヶ月以上に渡る長期の休みをとるのは難しいと思います。休んでもせいぜい一週間です。ほとんどの方は遅くても翌々日には仕事に復帰出来ています。
2.医療費が安く済んでしまう
これは考え方の問題です。日本の保険医療制度は複雑であり、自己負担割合や自己負担限度額などは収入や年齢によって様々です。医療費の金額に注意を払わない方もいらっしゃると思います。なんでもかんでも検査して、やたらと薬を希望する方もいます。これは患者側と医療側の双方のマナーの問題ですので、不必要な手術や投薬を避けるようにこちらからお話しています。
3.「入院」というイベントがない
「入院」というのは一大イベントです。ご本人にその気がないのに、周囲が騒いでしまうことがあります。世話焼き程度ならともかく、明らかに度を越したおせっかいということは多々あります。本人はともかくとして、イベント好きの周りの人にとって物足りないでしょう。あまり大騒ぎをしたくない、家族に迷惑をかけたくない方にとってはメリットかもしれません。
4.手術当日は運転が出来ない
手術当日だけは運転は控えてください。これは医学的な問題というより法的な問題です。手術当日は下肢に包帯を巻いてストッキングで圧迫するので、わずかに脚を動かしづらくなります。交通事故を起こさないためにも運転だけは控えてください。
当院はデメリットの多くは解決可能と考えています。
メリットがデメリットを大きく上回ると考えていますので、日帰り手術を推進すべきと考えています。
普通に考えたら、入院がいらなくて、時間が短くて、医療費が安くて、大騒ぎする必要もない、それで手術内容が同じだったら、日帰り手術ですよね。。ちょっとチクチクするぐらいは15分間だけ我慢すればいいですよね。。
みなさんはどう思いますか?
術後3ヶ月の例
投稿日:2017年9月28日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 当院での治療例
下肢静脈瘤の治療は完全日帰りで行っています。全例でレーザー治療です。
手術時間は長くても片足で20分程度です。簡単なケースだと10分程度で終わることもあります。
当院では平日の午前中だけで4-8件を毎日行っています。
平日午後と土曜日午前中は外来に充てています。
今回は静脈瘤の手術をして3ヶ月経ったケースです。
こちらは術前の写真です。おわかりになるかと思いますが、以前にも報告したケースです。
こちらは術後3ヶ月が経過した写真です。ご覧のとおりでぼこぼことした血管はありません。傷跡もほとんどありません。すっきりしたきれいな足に仕上がっています。
この患者様は他の患者様のためになるならと写真の使用をご承諾頂いた際に、結果と出来上がりで御恩に報いようと思いました。喜んでいただけて幸いでした。
スーパーグルー治療について
投稿日:2017年9月14日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について, 当院での治療例
TVで放映されて以来、当院でもスーパーグルー治療について質問を受けることが多くなりました。
当院でもスーパーグルー治療については興味を持っており、情報を収集しています。また、将来の採用も考慮しています。
しかし、現時点では当院も含めて多くの病院・専門クリニックではスーパーグルー治療は採用していません。自分や家族が患者であっても、スーパーグルー治療は受けないし、勧めません。
なぜならば保険診療であれば、15000円程度から出来るのに、自費診療で20万円以上も払う意味はないと思うからです。当院で収集した情報からは現時点でそれだけの差額を払うメリットはないようです。また、先行している欧米での情報からもまだまだ改善の余地がある治療であることが伺われます。
そもそも現時点ではスーパーグルーは個人輸入に頼っているため、企業による保証やアフターケアはありません。自分や家族の体に保証のないものを入れますか?私達は入れません。
現時点で主流であるレーザー高周波治療も日本での導入当初は様々なトラブルがありました。最新の治療が最善の治療とは限りません。経験の蓄積、専門家同士の意見交換、学会での検討などを経て、初めて最適な治療として保険で認められるようになります。その過程には数年かかるのが普通です。成熟過程を無意味なものと考えるか、安全のために必要な期間と考えるかは人それぞれだと思います。
幸いなことに下肢静脈瘤はそこまでの緊急性もない上に、レーザー高周波治療という安全で痛みの少ない治療法がすでに存在しています。
スーパーグルー治療を受けるのはもう少し成熟してからの方がいいかな、と私達は思います。