秋好院長ブログ
隠れ静脈瘤について
投稿日:2019年5月15日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 冷え症について, 血管外科について, 足のむくみ
「隠れ静脈瘤」をちょくちょく経験します。
「隠れ静脈瘤」という病名は医学的にはありません。本当は静脈瘤なのに、患者側や一般総合医側の誤解によって見逃されている静脈瘤を便宜的にそのように呼んでいるだけです。
これを理解するには静脈瘤の手術適応について説明しないといけません。
静脈瘤の手術適応を一言でいうと「静脈圧亢進症状の有無」です。
実は見た目の血管の膨らみはそんなに重要ではないのです。見た目がどんなに酷くても静脈圧亢進症状がなければ保険を使って手術することはできないことになっています。逆に見た目の問題がなくても、皮膚炎を伴うようなひどい静脈圧亢進症状があれば手術することは保険で可能ですし、専門医は手術を強く勧めます。なぜならば、自然に良くなる事はないので、後で苦労する事が目に見えているからです。
「静脈圧亢進症状」が具体的にはなんなのか、ということをあえてここまで書かなかったのですが、ここに「隠れ静脈瘤」が生じる理由があります。要するに「静脈圧亢進症状」について一般の方はほとんど知らないのです。TVでやっているのは表面の分かりやすい血管の膨らみだけで、静脈瘤の病態生理についてはほとんど語っていません。残念ながら一般総合医も似たような感じです。正確で掘り下げた知識よりも、わかりやすさが優先される世の中ではしょうがないのかもしれません。
それでは「静脈圧亢進症状」を列挙してみましょう。
足のむくみ、だるさ
足のつり(特に早朝や夜間)
ずっと立っていた時や椅子に座っていた時の足のだるさ、じんじんする感じ
皮膚のかゆみ
皮膚の黒ずみ
傷が治らない
皮膚のえぐれ(潰瘍)
などです。
上の3つならば手術は「一応は」待てます。「一応は」というのは手術さえすればかなり楽になって取り返せるし、跡も残らないので手術が遅れても問題ないということです。一方で、この3つの症状を持つ患者の方が自覚症状の訴えが強い事が多く、手術を強く希望することが多いようです。だるさ、つり、むくみなどは他人にはなかなか分かってもらえないことによる心理的なものもあるかもしれません。
下の4つがある場合は早く手術した方がいいです。なぜならば、進行するし、一度ついた色はなかなか落ちないし、潰瘍にいったんなると治っても跡が残ります。上の3つの症状に比べて、こっちの方がはるかに重症なのに、なぜかこっちの方が手術を嫌がります。不思議なものです。
いわゆる隠れ静脈瘤で問題になるのは下の4つです。また、皮膚炎が重症化すると皮膚が厚くなってぼこぼこの血管がかえってわからなくなって治ったかのように錯覚する人もいます。これを見逃すと患者は大きな不利益を被る事になります。注意しなければなりません。
ネット予約法の追加
投稿日:2019年4月15日 カテゴリー:お知らせ
明後日からドクターズ・ファイルからもネット予約ができるようになります。
治療、クリニックの説明などからそのまま予約ができるようになります。
とても便利ですので、ぜひご利用ください。
GW中の手術について
投稿日:2019年4月13日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
仕事などで平日に手術をできない方のために5月6日と5月7日に手術を行います。
術前検査等を完了した方から手術予約の受付を行います。
手術枠は数に限りがあるので、希望される方は早めの外来予約をおすすめします。
外来予約は電話とネット予約で可能です。
なお、5月6日と5月7日は外来は行っていません。手術のみです。
予約外でいらしても診察はできませんのでご了承ください。
そのかわりといっては何ですが、いつもより多めに手術をしたいと思っています。
普段は忙しくて病気を治せないない人のためです。ご理解、ご協力をお願いします。
下肢静脈瘤とかゆみ
投稿日:2019年4月5日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
ようやく暖かくなってきました。暖かくなるに伴い、かゆみの患者さんが続々と受診するようになっています。
下肢静脈瘤の最大の問題は皮膚炎です。皮膚炎をさらに放置すると潰瘍になっていきます。
皮膚炎の初期症状はかゆみです。
下肢静脈瘤になると逆流のために静脈圧が上昇します。静脈壁は薄いので、静脈圧が上昇すると血液が血管外に滲み出します。
赤血球は血管外では壊れてしまいます。壊れていた赤血球に含まれていた鉄分(ヘモグロビン)はヘモジデリンという物質となって皮膚に沈着します。このヘモジデリンを異物として貪食するために白血球が寄ってきます。白血球によって炎症が引き起こされるので痒くなるのです。これは皮膚炎といいます。
ちなみに静脈瘤によって皮膚が黒ずみます。色素沈着といいます。これは上述のヘモジデリンの色です。よく見ると鉄さびの色に似ているのがわかります。だって鉄分ですから。これは鉄さびがなかなか落ちないのと同じで一度つくとなかなか落ちません。手術しても簡単に落ちないし、手術しなければどんどん色がついていって最後には前述の皮膚炎になります。だから、かゆみや色素沈着が始まっている場合には早めの手術がいいと言えます。ステロイド軟膏を塗ると一時的にかゆみは治まりますが、根本的解決ではないし、潜在的には進行するので、当院ではおすすめしてません。
一説には暖かくなると下肢静脈瘤の遠因である動静脈瘻が拡張するので静脈圧が上昇すると言われています。このためにかゆみや皮膚炎が増悪するのかもしれません。当院では春から秋にかけては初診枠や手術枠を増やして、そのようなニーズに対応できるようにしています。
イチローの引退
投稿日:2019年3月22日 カテゴリー:日記
イチロー選手が引退しました。
イチロー選手の会見で印象に残ったのは、野球が楽しくてプロ野球選手になったけどプロ野球でレギュラーになってから野球が楽しいことはなかった、ということです。色々な状況で打席や守備に立たされるのに、常にヒットを要求される、常にスーパープレーを要求される、そのために準備を怠らない毎日というのは決して楽しいことではないと思います。
先日、友人の外科医に「下肢静脈瘤ばかり毎日やって楽しいですか?」と聞かれました。
これ、イチロー選手と全く同じ答えです。私も全く楽しくありません、残念ながら。
何千例、何万例と同じ病気を診ていたら、誰だって飽きます。数カ月先にまで手術の予定が入っており、いつでも100%成功を期待されるのは楽しい毎日ではありません。
しかし、仕事や職業というのは楽しさにお金を払ってもらっているわけではありません。苦労や成果に対して報酬が支払われるのですから、そのための努力やプレッシャーは当たり前なのです。仕事に対して新鮮さや楽しさを求めているようでは、他人様に技術を売る職人としての水準にそもそも達していないと思います。
嫌になるほど同じ仕事をやって、どんな時でもベストの結果を出して、それでもさらに向上を目指す。そして、自分の感情をコントロールして、自分の技術を幅広く提供して世の中を良くする。そこまでやって初めて「プロフェッショナル」と呼ばれるんだと思います。その仕事が野球であるか手術であるかラーメンであるかは小さな違いですし、その舞台が大リーグであるか平塚であるかということは本当にどうでもいいことです。
今日はそんなことも思いながら8件のレーザー手術をしました。もちろん、全例成功です。
自分はまだ世の中の役に立てる、いつかイチロー選手みたいになんの後悔もない引退を迎えられるようにがんばろうと思いました。