秋好院長ブログ
静脈瘤は「治療不要」というのは本当なの? その1
投稿日:2018年6月13日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
刺激的なタイトルですが、重要な話です。
この半年間で小田原・湯河原・熱海方面から静脈瘤が重症化した人が数多く来院されました。重症のうっ滞性皮膚炎で足が真っ黒になった人や皮膚がえぐれて潰瘍になっている人たちが何人も来ました。一昔前までは平塚からもそのような患者さんは年にぽつぽつといましたが、最近は珍しくなっています。
いずれの患者さんも「かかりつけの先生に見てもらったときに治療不要と言われたからほっておいた」「同じように静脈瘤を持っている知り合いが治療不要とかかりつけの先生にいわれたから自分も大丈夫だと思った」と、過去に「治療不要」と言われたとおっしゃいます。
かかりつけの先生のおっしゃっていることは決して間違いではありません。ただし、それは「静脈瘤は決して自然には良くならない、じわじわと進行する、最後には皮膚炎や潰瘍となって痕が残る」ということを見落としています。皮膚炎や潰瘍になってから静脈瘤の治療をしてもなんとか治りますが、時間がかかる上に医療費はかかります。率直にいって、ほんとーーーーーーっに大変です。重症の下肢静脈瘤の治療を自分でなさったことのない方にはわからないと思います。
もう一つのファクターとしては過去の教科書にはそのように書いてあったからです。昔の静脈瘤の治療は全身麻酔・腰椎麻酔の手術で一週間入院はざらでした。傷も大きく、傷跡も残りました。メリットとデメリットを比べると、相当の重症でない限りはメリットがデメリットを上回りません。昔の教科書にはそのように書いてありました。しかし、レーザー治療の発達によって静脈瘤の治療は大きく変わりました。現在の静脈瘤治療は局所麻酔、日帰り手術、傷跡は針穴が当たり前です。我々のような静脈瘤専門家にとっては当たり前のことですし、海外の最新のガイドラインにはきちんと載っていますが、日本のほとんどのかかりつけ医は知らないはずです。残念ながら日本の一般的な教科書の多くはそこまでキチンとは書いてないのが現実です。
そうはいっても、かかりつけ医側にしてみれば、「治療不要」と伝えたのは10年以上前の話であって、状況が変わったのなら改めて相談に来るべきだという言い分になります。一方で患者側にしてみれば、「治療不要」と言ったのが悪いということになります。これは理解の乖離としか言いようがありませんが、どちらが悪いというわけではなく、人間同士のコミュニケーションの限界なのだと思います。
当院ではきちんとエコー等で検査をした上で手術の対象となる静脈瘤がその時点で存在するかを正確に判断します。また、現時点で治療対象となる静脈瘤がない場合には、そのまま帰すのではなく将来の見込みについても説明し、どのような症状が現れたら再受診をするべきかを説明します。遠方からいらしていて、周囲に専門クリニックがない状況の患者では、そこまでしないとのちのちに重症化させてしまうからです。
次回は、どの時点になったら下肢静脈瘤専門医(=血管外科医)を受診したほうがいいか、についてお話します。