秋好院長ブログ
静脈瘤は「治療不要」というのは本当なの? その2
投稿日:2018年6月21日 カテゴリー:下肢静脈瘤について
「治療不要」と言われた下肢静脈瘤に治療が必要となるのは、ずばり、皮膚炎や色素沈着が生じた時です。
皮膚炎や色素沈着と言われても、一般の人はわからないと思いますので、噛み砕くと、
皮膚炎=皮膚の炎症。痛み・かゆみや皮膚のえぐれ(潰瘍)を生じる。
色素沈着=皮膚に色がつくこと。黒ずみやシミになる。
となります。いずれも静脈圧の上昇による血球の漏出、ヘモジデリン(鉄分)の沈着がその成り立ちであり、静脈瘤としてかなり重症であることを示しています。
いずれの状態も放置すればどんどん悪くなる上に、治療後も治るのに時間がかかり、また多くの場合で痕を残すので、皮膚炎や色素沈着が少しでもあったら治療する方がよいと思います。放置した時のデメリットが大きすぎますので、当院ではきちんと説明して手術を強く勧めます。
次に、治療が絶対に必要とまではいえないけども、手術するメリットが大きいのは、足がだるい、重い、つるといった時です。
静脈瘤があると静脈圧が高くなって以下のような症状が出てきます。
一日中立っていると、夕方には足が重くてたまらなくなる。
常に足がだるくて歩くのが辛い。
足がじんじんする。
朝方に足がつって起きてしまう・夜眠れない。
このようなケースでは、手術をするとかなり足が楽になります。夜中に足がつって寝不足になっていた患者さんは寝られるようになったと喜びます。
昔は手術が大変で、入院が必要、全身麻酔や腰椎麻酔が必要、ダウンタイムが長くて仕事を休む必要があるといった理由で弾性ストッキングでしばらくごまかしておく、というのが現実的な選択肢でした。そもそも専門医は遠い都市部にしかいないので、現実的に無理でした。しかし、現在は20分程度の日帰り手術が当たり前ですので、距離も仕事もほとんど問題になりません。治療するメリットが治療しないデメリットを大きく上回ってしまいますので、患者の立場になれば手術をあきらめる理由はありません。保険でももちろんカバーされます。
こういったケースでは当院では「辛いのであれば手術を考えた方が現実的です。手術を待つ場合、皮膚炎や色素沈着が少しでも出てきたならすぐに連絡をください。」と説明しています。
専門クリニックは手術・治療だけがお仕事なのではなく、啓蒙や経過観察も大事なお仕事です。
静脈瘤で死亡することはまずありませんが、重症化すると長く苦しむことになります。
まずは専門医を受診して、自分の静脈瘤がどの程度なのかを判断してもらってから様子を見るのがいいと思います。