秋好院長ブログ
静脈瘤の血管を焼いても大丈夫なの? その3
投稿日:2018年5月28日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 血管外科について
今回は下肢にある太い静脈についてです。
下肢の静脈には皮膚表面に分布する表在静脈と筋肉の奥深くを走行する深部静脈に大きく分けられます。表在静脈は皮膚表面を走っていて、皮膚の色が薄い人は透けて見えます。これに対して深部静脈は筋肉の奥深くを走っているので表面からは触れないし、見ることも出来ません。さらに表在静脈と深部静脈は無数の細い血管で交通しています。平行に走る縦の太い線の間を無数の横線がはしるようなあみだくじのような構造を想像してもらえるとよいと思います。
さて、この表在静脈と深部静脈の太さにはどれくらいの差があるのでしょうか?かなり個人差はありますが、直径でいうと3倍から5倍はあります。面積でいうと9倍から25倍です。例えれば、表在静脈は1車線の道路、深部静脈は9車線から25車線の道路ということになります。
下肢静脈瘤は表在静脈に出来ます。静脈瘤が出来ている表在静脈を焼き潰したり、切除したら、そこを流れている血液はどうなってしまうの?どこを流れるの?というのが一般の方には不思議でならないようです。
これは簡単なことで、表在静脈を流れていた血液は表在静脈と深部静脈を交通させている細い静脈を通って深部静脈に流れ込みます。もともと細い血管を流れている血流量ですから大したことはありません。深部静脈で受け止めることは十分に可能です。
1車線の道路が渋滞して排ガス問題がひどいからとその道路を潰しても、近くに25車線の道路があれば地域全体としては交通は維持されます。それと同じことです。
下肢静脈瘤の術前には必ず超音波検査をします。これは深部静脈が開存していることを確認して、表在静脈を焼いても大丈夫なことを確認しているのです。