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湘南平塚下肢静脈瘤クリニックブログ

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秋好院長ブログ

NHKチョイスシリーズ5 不適切治療を回避するために

不適切治療を行っている施設にひっかからないためにはどうすればよいのか?

1. 医師の経歴を確認する。

「血管外科医」であることを確認してください。昔は平気で泌尿器科医であることや内科医であることや整形外科医であることが経歴に書いてありました。書く方も書く方ですが、これで受診する方も受診する方です。最近は悪徳クリニック側も警戒して、経歴をぼかすようになりました。血管外科医であれば、血管外科勤務歴を明快に書いてあります。(隠す必要がないからです。)

2. 高周波治療は避ける。

高周波治療そのものは良い治療です。ただし、高周波治療が不正の温床になっているのも事実です。高周波治療を行っている施設すべてが悪徳施設というわけではもちろんありませんが、悪徳施設はほぼ例外なく高周波治療でした。これは高周波治療のみがカテーテル再利用が可能な構造になっており、コストカットが可能だからです。

3. グルーでの両足同時治療を避ける。

現時点での診療報酬体系ではグルー治療での両足同時治療が最も利益が出ます。従って、グルーでの両下肢同時治療を執拗に薦めるような場合は疑ってかかったほうが良いと考えます。

4. インスタグラムでインフルエンサーを使って宣伝する施設は避ける。

下肢静脈瘤患者の圧倒的大多数は高齢者です。現役世代や若者がならないわけではありませんが、ずっと少ない。現役世代や若者にしか通用しないインスタグラムやインフルエンサーに頼るということはどういうことか、ということを想像してみてください。

5. 静脈瘤クリニックチェーンは避ける。

高周波治療における不正なカテーテル再利用の仕組みは、グループで一括購入して、それを再滅菌しながらグループ内で使い回すということです。そうすると、購入本数と実際の使用本数の追跡ができなくなり、再利用がバレなくなります。カテーテルは非常に高価なので、再利用で浮いた利益を次々とチェーン展開やネット広告に投資していきます。その過程で内科医や泌尿器科医や整形外科医や精神科医を自称「下肢静脈瘤専門医」と仕立て上げていくわけです。ただし、最近はチェーンであることをあえて書かない、カテーテルを共同購入はしているが名目上は独立しているなど巧妙化しています。

6. 広範囲に積極的なリスティング広告を展開しているところは避ける。

「下肢静脈瘤専門医」という資格はこの世に存在しません。「血管外科が下肢静脈瘤を専門としており、下肢静脈瘤を特に得意としている血管外科医がそのなかにいる」というだけです。それが医療界の一般的な共通認識です。血管外科医自体の数も少ないですが、下肢静脈瘤を得意とする血管外科医はさらに少なくなります。きちんとした血管外科医には良識的な医療機関からの紹介が集まってきますので、ネット広告を盛大に行う必要はありません。ほっといても患者が集まってくるからです。神奈川県には慶應義塾大学血管外科でトレーニングをうけた身元の確かな血管外科医による静脈瘤クリニックが4軒ありますが、いずれもネット広告は一切していません。

7. 遠方の下肢静脈瘤クリニック受診を避ける。

これは悪徳クリニックによる不適切治療とは関係がありませんが、遠方の下肢静脈瘤クリニックで治療を受ける意味はありません。きちんとしたトレーニングを受けた血管外科医にとって下肢静脈瘤は基本的な手術手技であり、血管外科医にとっては難しいものではありません。もちろん、医師によって多少の考え方の差があったり、相性はありますが、東京まで出かけるほどの医療格差はないのが現実です。それをわざわざ東京まで出かけるのは、吉野家の牛丼を食べるのに築地の1号店まで行くことにこだわるとか、ビッグマックを食べるのに銀座で食べることに喜びを覚えるとか、頭から否定はしませんが蓼食う虫も好き好きとしか言えません。テレビに釣られて東京で治療を受けた後に再発した患者さんを何人も拝見しましたが、どんな手術をされたかも本人がわかってないし、手術内容を記載した紹介状を持参するように促しても面倒くさがります。これでは本末転倒であり、より良い医療を受けるために東京までわざわざ行った意味がないと考えます。厚労省の推進する地域医療構想に則れば、居住地域の医療圏で医療を完結させるのが最も合理的であり、一般医療を受けるために東京まで行くことには合理性はありません。所属する医療圏に該当専門医がいなくても、隣接医療圏まで行けば大抵はみつかるはずです。

不適切治療問題の本質は、病床数削減や医療費削減の数値目標達成の一環として下肢静脈瘤治療を入院治療から外来治療に転換することを目論んだが、血管外科医の数が足りないために他の診療科医師にも門戸を開いたこと、高周波治療でカテーテル再利用防止措置をとらなかったことです。前者だけであれば、問題は小さかったと思います。泌尿器科医や整形外科医や内科医が下肢静脈瘤治療に携わるのは違和感を感じますが、うっ滞性潰瘍の患者を多数抱える皮膚科医が近隣に血管外科医がいない地域で携わることには意義があると感じます。ただ、それであっても組織的なカテーテル再利用と組み合わされば、正常な医療や学術の発展を妨げます。このような状況が一刻も早く改善され、正常な医療が戻ることを切に願います。

NHKチョイスシリーズ4 レーザー治療について

レーザー治療・高周波治療については何の問題もありません。ただし、きちんとした血管外科医がやっていれば。

レーザー治療・高周波治療は血管の内側に熱でダメージを与えて、壊れた血管が吸収されるように体のスイッチを入れます。すぐには消えませんが、半年から一年ほどで分解されてスーッと消えていきます。レーザー治療と高周波治療の違いは発熱方式の違いです。治療効果そのものには大差はありません。

ストリッピング術とグルー治療の中間に位置すると考えてよいかと思います。

ストリッピング術:すぐに血管はなくなるが、とても痛い。万能。

グルー治療:痛みはすくないが、静脈瘤は目立たなくなっても全く消えないので永遠に体に残る。使い途が限定される。

レーザー治療:あまり痛くない。一年ほどで静脈瘤は自然吸収されてなくなる。ほぼ万能。

2021年時点においては王道の治療と言えます。治療に悩むのであれば、レーザー治療を選べば間違いはないと思います。

はっきり言ってしまえば、レーザーでなんでも治しちゃえるのが現実だし、入院なんて一切必要ないし、総合的にはストリッピング術より優れています。また、保険医療の観点からも、ドイツのような財政の健全な先進国ですらもストリッピング術しか保険で認められていないのが現実で、レーザー治療が保険で認められているだけでも日本はとても恵まれています。その上で、色々とデメリットもあるのに高額なグルー治療まで日本で保険適応にする必要なんてない。

ではなんでNHKでわざわざ放送するのか?なんでグルー治療まで保険適応とするのか?それは、レーザー治療が問題というより、高周波治療機器の特徴として誰にでも使えるが故に「専門外医師による不適切治療」という大きな問題を生み出してしまったからなんです。また、そういう専門外医師たちがグルー治療を自由診療で行うことで新たなトラブルを生み出してしまうのを防ぐためです。

高周波治療はカテーテルが太くて傷跡が残ってしまうという欠点や汎用性が劣るという欠点がある一方で、誰にでも使いやすくとっつきやすいという特徴があります。もう一つの特徴として、高額なカテーテルの再利用ができるということです。(レーザーでは再利用防止措置がされていて再利用はできない。)前者のメリットは日帰り手術普及のボトルネックである血管外科医の不足という問題を補うメリットがありました。一方で、カテーテルの再利用は明らかに違法であり、医療機関間の公正な競争を阻害します。その結果として、専門外医師による高周波治療、それも違法なカテーテル再利用、を行う下肢静脈瘤クリニックだけが凄まじい勢いで増殖し、悪貨が良貨を駆逐するという状況になりました。血管外科医によるクリニックでは複雑な病変を治療するためにレーザー機器を使用することが多く、カテーテル再利用が出来ないために高コスト体質となるためです。並行して悪徳クリニックによる稚拙な診断と治療による患者被害が多発するようになりました。

カテーテル再利用を摘発すればいいだけの話ですが、グループ内の複数クリニックで使いまわしているようなケースでは摘発は極めて困難です。販売企業も悪徳クリニックに再利用を止めるように注意喚起を繰り返し行いましたが聞く耳をもちません。

このような悪徳クリニックを駆逐するために、診療報酬を経営が出来ないレベルにまで極端に切り下げました。また、そのような悪徳クリニックが自費診療のグルー治療に転換するのを防ぐために、ダンピングとしか言えないような低価格で保険収載しました。

NHKチョイスで下肢静脈瘤をいまさら特集して放送したのは、患者啓蒙を通してこのような悪徳クリニックから患者を守るためです。

NHKチョイスシリーズ3 ストリッピング治療について

今回はストリッピング治療についてです。

当院ではストリッピング治療をHPでも前面に押し出しているにも関わらず、当院でももう三年以上ゼロです。

ストリッピング治療と同様に下肢静脈造影も現在はほとんど行われていません。私自身、もう10年以上やっていません。

羊頭狗肉と非難されれば、そのとおりです、とお答えする他ありません。

では、なぜ前面に押し出すのか?

このストリッピング治療と下肢静脈造影の組み合わせは下肢静脈治療においては最強です。特に達人と言われるようなレベルの先生が行った手術は本当に再発しないし、完璧としか言いようがない。

ただし、ストリッピング術では入院が必要だし、術後の痛みもレーザー治療より強くなってしまいます。残念ですが、今の風潮ではストリッピング術が復活することはまずないのが現実だと思います。当院でも希望者ゼロがずっと続いています。

ストリッピング術の意義とは下肢静脈瘤の解剖生理を手術を通じて学べるということです。ストリッピング術の経験から学んだことは1)伏在静脈、副伏在静脈、不全穿通枝等の逆流源を画像診断から正確に把握し、逆流を徹底遮断する、2)表在静脈瘤処理をおろそかにすると再発や追加治療の原因となる、ということです。ストリッピング術の経験や知識なくして行うレーザー治療やグルー治療は、本当にいい加減な治療となります。また、私が旧式のレーザー治療や高周波治療や新興のグルー治療に批判的なのはこれらの治療機器がこの二点を完全に解決するものではないからです。

手術を受ける以上はベストを尽くしてほしいというのは当たり前の気持ちだと思います。医療側がベストを尽くすのは当然のことですが、患者側も怪しいネット広告やSNSに踊らされずにストリッピング術の経験を有するきちんとした血管外科医を選んでほしい、というのが血管外科医の願いです。

NHKチョイスシリーズ2 弾性ストッキングについて

さて、鉄は熱いうちに叩けということで連投です。今回は弾性ストッキングについてです。

結論から申し上げると「弾性ストッキング(別名 着圧ストッキング)は下肢静脈瘤の症状を抑制するのには有効であるが、全ては患者自身の努力次第。また、下肢静脈瘤そのものを治すことはできない」ということになります。

下肢静脈瘤がどうやって症状を引き起こすかというと、静脈弁の壊れた伏在静脈や不全穿通枝を介して血液が深部から表層に逆流することによって表層の下肢静脈の内圧が上昇し、微小循環障害や血液漏出を起こすことがメインのメカニズムです。(厳密にはこれ以外のメカニズムもあると推測されていますが、とりあえずは話を簡単にするためにこのメカニズムがメインと仮定します。)正確性を犠牲にして、わかりやすく一言でいうと、「膝下の血流が淀むため」となると思います。

弾性ストッキングの原理は「血流が淀むなら、絞り上げればいいじゃん」ということです。雑巾をしぼるのと同じように、外からきついストッキングで圧をかけることによって、膝下から血流を絞り出しているわけです。これはすごく有効で、下肢静脈瘤の症状をかなり緩和します。

ただし、欠点もあります。まず第一に、夏は暑くて履けない、履くと蒸れる・かぶれる、という問題です。日本の夏は厳しさを増しているので、20年前と比べてもこの問題は比重を増しているように感じます。二番目に、腕の力が弱くて履けないということです。現役世代や若い人にはピンとこないと思いますが、70代になると腕の筋力が低下するので弾性ストッキングを履くのが困難なのが現実です。これも、20年前と比べて高齢化によって状況が変わっているように感じます。

最大の問題は、「めんどくさい、金がかかるのに治らない」ということです。一部の例外を除いて、弾性ストッキングには保険が適応されません。従って、洗い替えや買い替えもすべて自己負担です。また、毎朝履くのもめんどくさいようです。にも関わらず、下肢静脈瘤そのものの根本的治療にはならず、あくまでも症状緩和でしかありません。

結果的に、どれくらいの人が1年以上継続して履けているかというと、実感としては1%以下です。湘南地域での静脈瘤診療を始めて9年になりますが、かかりつけ医・担当医に関わらず誰が薦めてもほとんど履けていないというのが実感です。どちらかというと、せっかく受診したのに弾性ストッキングで返されたということで、二度と受診しないと静脈瘤を放置し、足が真っ黒になったり、潰瘍になって当院を受診し、最初に弾性ストッキングを勧めた医師を恨むということが多いようです。夏が涼しい北海道やノルウェーやカナダだとまた話が違うのだと思います。

NHKということで、偏りがないような一般論を中心に放送すると、とにかく最初の治療は弾性ストッキングということになるんだと思います。が、そこは教科書と現実世界には大きな隔たりがあるように、土地柄や気候風土を考慮して判断していくのが望ましいと考えます。

NHKチョイスシリーズ1 グルー治療について

NHKの健康番組「チョイス」で下肢静脈瘤が特集されました。放送内容に関しての質問が多数寄せられていますので、この場を借りて回答したいと思います。

第一回はグルー治療についてです。

グルー治療に関して当院のスタンスを最初に申し上げると「当院でもグルー治療は可能です。ただし、性能が今ひとつなので現時点ではレーザー治療が優れている。」ということになります。

グルー治療のメリットは局所麻酔注射の回数が少ないのと伏在神経障害が起きにくいというものです。医療機関側・厚労省側・保険組合側のメリットしてはレーザー本体の数百万円に及ぶ設備投資がいらないというものです。

局所麻酔のための注射の回数は確かに減ります。それは間違いありません。ただ、もともとそんなに気にならない人が多いのが現実ですので、よほど神経質な人を除けば現実的なメリットはほとんどありません。どれくらい「神経質な人」にとってメリットがあるかといえば、ワクチンや採血や歯医者の治療の際のチックンやチクリでも卒倒しちゃうような人であればメリットはあると思います。

もう一つの伏在神経障害に関しては専門的な話になります。下腿においては伏在静脈と伏在神経が伴走しているため、伏在静脈を焼灼すると伏在神経も影響を受けます。その結果として足首の内側あたりに軽度の知覚鈍麻がおきます。ただし、下腿の伏在静脈を焼灼するのはうっ滞性潰瘍があるケースがほとんどであり、知覚鈍麻が起きることによってむしろ速やかな除痛が得られます。足首の内側に潰瘍があるような場合にはむしろ意図的に伏在神経障害を狙うことすらあります。神経ブロックをかけたのと同じ効果があるのです。従って、レーザー治療による伏在神経障害は重症患者にとってはむしろメリットとなります。(無料で神経ブロックを受けたのと同じで速やかに痛みがとれるから。)実際、末梢神経挫滅術というのは血管外科における古典的手術であるスミスウィック手術として知られており、保険収載もされています。(ただし、かなりマニアックな手術になるので、血管外科医でもごく一部しか知らないです。)

グルー治療のデメリットとしてはアレルギー反応としこりによる違和感です。

グルー治療を一言でいってしまうと、アロンアルファのような瞬間接着剤を血管内に注入して静脈瘤を固めてしまう治療です。瞬間接着剤そのものと静脈瘤は永遠に残ります。(レーザー治療の場合は半年から一年で静脈瘤が吸収されてしまいます。)この瞬間接着剤がアレルギーを引き起こすことがあり、赤く腫れたり、周囲に炎症を引き起こしてしこりとして感じられると報告されています。しこりによる違和感もかなり長い間続きます。違和感だけであれば、我慢すればいいだけと思うのですが、重篤なアレルギーを引き起こした場合には下肢全長を切り開いて摘出が必要な場合があります。こうなると傷跡が永遠に残り、何のための低侵襲治療だったのかわからなくなります。

このようなメリットとデメリットを比較すると当院ではグルー治療に関しては積極的には行っていないのが現実です。そもそも、多くの血管外科医が「あんな治療意味ない、あれを患者にやるのは良心に反する」とボロクソに言っている治療を、物珍しさだけで患者に売り込むべきではないと思います。NHKチョイスも治療法の紹介に偏りがないように紹介しただけであって、本音は別のところにあると思います。医療の大原則として「First, do no harm. (患者に害を与えてはならない)」というのがあります。より良い結果を求めてリスクを冒すことと、物珍しさや話題性でとりあえずやってみる、というのは同じリスクであっても峻別するべきです。前者のリスクは本当に困っている人や見捨てられている人を救うことができますが、後者のリスクには何の意味もありません。

保険収載されたとはいえ、グルー治療についてはまだまだ様子見でよいのが現実だと思います。公平を期して申し上げれば、当院も将来はグルーを本格導入するつもりです。ただし、そのためには1)複数の企業がグルーを販売して企業間の公正な競争が維持されること、2)企業から寄付金を受領した一部のクリニックや学会の宣伝活動だけでなく、きちんとした学術協議を経ること、3)器具自体がもっと細くなり、レーザー治療よりも低侵襲化すること、が条件となります。レーザー治療導入初期(2009年頃)はこれらの条件が満たされず、現在でもその頃に都内でレーザー治療を受けた湘南地域の患者さんの相談に乗っているのが現状です。同じような歴史を繰り返さないためにも、導入には慎重であるべきと考えます。

クリニック概要

医院名 湘南平塚下肢静脈瘤クリニック
診療科目 内科・血管外科
住所 〒254-0043
神奈川県平塚市紅谷町14-20 FT共同ビル3F
TEL JR東海道・湘南新宿線「平塚駅」北口・西口より
徒歩3分
電話 0463-74-6694
休診日 日曜日、祭日、土曜日午後
診療時間 日・祝
9:00~
12:00
13:00~
18:00

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