秋好院長ブログ
NHKチョイスシリーズ4 レーザー治療について
投稿日:2021年3月29日 カテゴリー:お知らせ
レーザー治療・高周波治療については何の問題もありません。ただし、きちんとした血管外科医がやっていれば。
レーザー治療・高周波治療は血管の内側に熱でダメージを与えて、壊れた血管が吸収されるように体のスイッチを入れます。すぐには消えませんが、半年から一年ほどで分解されてスーッと消えていきます。レーザー治療と高周波治療の違いは発熱方式の違いです。治療効果そのものには大差はありません。
ストリッピング術とグルー治療の中間に位置すると考えてよいかと思います。
ストリッピング術:すぐに血管はなくなるが、とても痛い。万能。
グルー治療:痛みはすくないが、静脈瘤は目立たなくなっても全く消えないので永遠に体に残る。使い途が限定される。
レーザー治療:あまり痛くない。一年ほどで静脈瘤は自然吸収されてなくなる。ほぼ万能。
2021年時点においては王道の治療と言えます。治療に悩むのであれば、レーザー治療を選べば間違いはないと思います。
はっきり言ってしまえば、レーザーでなんでも治しちゃえるのが現実だし、入院なんて一切必要ないし、総合的にはストリッピング術より優れています。また、保険医療の観点からも、ドイツのような財政の健全な先進国ですらもストリッピング術しか保険で認められていないのが現実で、レーザー治療が保険で認められているだけでも日本はとても恵まれています。その上で、色々とデメリットもあるのに高額なグルー治療まで日本で保険適応にする必要なんてない。
ではなんでNHKでわざわざ放送するのか?なんでグルー治療まで保険適応とするのか?それは、レーザー治療が問題というより、高周波治療機器の特徴として誰にでも使えるが故に「専門外医師による不適切治療」という大きな問題を生み出してしまったからなんです。また、そういう専門外医師たちがグルー治療を自由診療で行うことで新たなトラブルを生み出してしまうのを防ぐためです。
高周波治療はカテーテルが太くて傷跡が残ってしまうという欠点や汎用性が劣るという欠点がある一方で、誰にでも使いやすくとっつきやすいという特徴があります。もう一つの特徴として、高額なカテーテルの再利用ができるということです。(レーザーでは再利用防止措置がされていて再利用はできない。)前者のメリットは日帰り手術普及のボトルネックである血管外科医の不足という問題を補うメリットがありました。一方で、カテーテルの再利用は明らかに違法であり、医療機関間の公正な競争を阻害します。その結果として、専門外医師による高周波治療、それも違法なカテーテル再利用、を行う下肢静脈瘤クリニックだけが凄まじい勢いで増殖し、悪貨が良貨を駆逐するという状況になりました。血管外科医によるクリニックでは複雑な病変を治療するためにレーザー機器を使用することが多く、カテーテル再利用が出来ないために高コスト体質となるためです。並行して悪徳クリニックによる稚拙な診断と治療による患者被害が多発するようになりました。
カテーテル再利用を摘発すればいいだけの話ですが、グループ内の複数クリニックで使いまわしているようなケースでは摘発は極めて困難です。販売企業も悪徳クリニックに再利用を止めるように注意喚起を繰り返し行いましたが聞く耳をもちません。
このような悪徳クリニックを駆逐するために、診療報酬を経営が出来ないレベルにまで極端に切り下げました。また、そのような悪徳クリニックが自費診療のグルー治療に転換するのを防ぐために、ダンピングとしか言えないような低価格で保険収載しました。
NHKチョイスで下肢静脈瘤をいまさら特集して放送したのは、患者啓蒙を通してこのような悪徳クリニックから患者を守るためです。