秋好院長ブログ
トキより少ない血管外科医
投稿日:2018年1月20日 カテゴリー:日記, 血管外科について
当院は下肢静脈瘤の専門家である血管外科医によって運営されています。
血管外科といっても一般の方はほとんど知らないと思います。実は多くの日本の医療関係者も知りません。診療所開設申請の時には保健所の人もしりませんでした。
アレクシス・カレルは血管吻合法と臓器移植の開発に対して1912年のノーベル医学生理学賞を贈られました。欧米ではそれぐらいにメジャーな診療科なんですけどね。
日本では色々な理由で血管外科はマイナーな存在でした。自分が血管外科を専攻することになったときには、医師仲間にさえ「それどんな科?何するの?」と聞かれました(T_T)。静脈瘤の専門家だよ、と答えても、「なんだ静脈瘤か」という反応でした。当時はレーザー治療もなく、血管外科医が細々とストリッピング術を施行している状況でした。静脈瘤の患者数にくらべて治療する血管外科医の数が少なすぎて手術まで一年待ちはざらでした。
どれくらい少ないのか気になりました。数年前の学会でのアンケート調査では血管外科医を標榜して活動している医師は約200名です。日本で絶滅危惧種といえばトキです。トキより少ないとちょっと不安ですよね。というわけで環境省のページに行きました。http://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/toki.html
結果はなんと、飼育下に202羽、野生下に139羽、計341羽。辛うじて野生のトキよりは多いですが、総数ではトキの方が多い!
世界で珍獣といえばパンダ。パンダと比べるとどうなんでしょうか?WWFのページに行きました。https://www.wwf.or.jp/activities/2015/03/1252807.html
パンダは1,864頭!珍獣よりはるかに少ない血管外科医、ということは「珍医」か?がんばれ、血管外科!
専門医制度の整備の際にも血管外科医は数が少なすぎて独自の制度を持つことが出来ず、心臓外科と統合して「心臓血管外科専門医」となりました。しょうがないですよね、トキより少ないんだもん。
パンダの子供はニュースになりますが、血管外科医に子供が生まれてもニュースになりません。。パンダが羨ましいです。
冗談・愚痴はさておき、今年の目標は血管外科診療所として血管外科診療を地域に定着させること、血管外科における病診連携(病院と診療所の連携)を深化させること、です。楽しみな一年です。