秋好院長ブログ
足がむくむ、つる、張るという症状について
投稿日:2018年3月29日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 脊柱管狭窄症, 血管外科について, 足のむくみ, 閉塞性動脈硬化症について
今回はメール等でお問い合わせがあったことについて述べたいと思います。
足がむくむ、つる、張るという症状には様々な原因がありますが、下肢静脈瘤が原因のことがあります。
下肢静脈瘤の本態は伏在静脈や不全穿通枝の逆流による静脈圧上昇です。静脈圧が上昇するとその逃げ道をもとめて、皮膚表面の血流が増加し、表在静脈が拡張して瘤(こぶ)状になります。表在静脈の瘤状拡張はあくまでも二次的なものです。一般の方は外からしか見えないので表面の瘤があるかないかで下肢静脈瘤を判定しがちですが、それは誤りです。専門医はその奥にある伏在静脈や不全穿通枝の存在を超音波検査やCTなどで診断しています。
初期の静脈瘤では伏在静脈や不全穿通枝が逆流して静脈圧は上昇していますが、表在血管は拡張していないときもあります。このような時は漠然とした足がむくむ、つる、張るという症状のみが存在しています。また、逆に重症の下肢静脈瘤では皮膚表面の血管拡張がわからなくなることもあります。これは皮膚の炎症が進んで足が腫れあがってマスクされてしまうためです。
もちろん上記の症状がすべて下肢静脈瘤のためとは限りません。深部静脈血栓症のときもあるし、腰部脊柱管狭窄症のときもあるし、血栓塞栓症のときもあるし、閉塞性動脈硬化症のときもあるし、膝窩動脈捕捉症候群のときもあるし、膝窩動脈外膜嚢胞のときもあるし、バージャー病のときもあります。肥満や冷え症のときもあります。さらには複数のものが合併している時もあります。血管外科を長くやっているとそれなりに色々なことに遭遇してきているので、拝見しないとなんとも言えないのが率直なところです。
次に、仮に初期の下肢静脈瘤だったとして治療の話に移ります。
明らかな伏在静脈や不全穿通枝の逆流が確認され、症状が日常生活に影響を及ぼしている場合には手術を考慮します。多くの場合でレーザー手術で問題ありません。また、初期の場合は手術も短時間で済むことが多いです。うっ滞性皮膚炎などに重症化してから下肢静脈瘤手術を受けに来る方が多いのですが、本当は初期で手術をした方がやる方も受ける方も楽です。
伏在静脈や不全穿通枝の逆流がごく軽度の場合や逆流はあるんだけれど何らかの事情で手術を受けられない場合には手術以外の手段で生活に支障をきたさない対策法を探ります。そのような対策法で満足出来ない場合には改めて手術の可能性を探ることになると思います。
伏在静脈や不全穿通枝の逆流が全く無いときは、まずは他の原因を探るのが妥当だと思います。さきほど列挙した別の病気はまた別の詳しい検査が必要になります。これはまったくもってケースバイケースですので、ここではとても書ききれないので割愛します。
ざっとさわりを述べるとこんな感じです。こういったことを患者さんが部屋に入った瞬間から観察しながら判断しているわけです。
下肢静脈瘤による足のかゆみ、黒ずみ
投稿日:2018年3月26日 カテゴリー:下肢静脈瘤について
今回は下肢静脈瘤による足のかゆみと黒ずみについて解説です。
下肢静脈瘤になると足が痒くなることがあります。痒くなった場合には手術を勧めています。
痒くて掻き壊すとそこが潰瘍化(皮膚がえぐれた状態になること)することがあるからです。
手術をした後はかゆみがすっきり治まることが多いです。
では、なぜかゆくなるのでしょうか?
静脈瘤が出来ると静脈圧が高くなって赤血球が血管の外に滲み出します。
血管の外に滲み出た赤血球は壊れてしまいます。そうすると赤血球の中に含まれる鉄分(ヘモグロビン)が皮膚に沈着してしまうのです。
この鉄分を貪食するために白血球が寄ってきて炎症反応を起こします。白血球は炎症を引き起こしますので、かゆくなるのです。
治りかけの傷が痒くなりますよね。あれと同じ痒さです。
また、かゆみがある患者は皮膚の色が黒ずんでいることがあります。(色素沈着)
あれは沈着した鉄分の色なのです。鉄さびの色と同じだと思ってもらえるとわかりやすいと思います。
この色は一度つくとなかなか落ちません。これも鉄さびがなかなか落ちないのと同じだと思ってもらうとわかりやすいと思います。
残念ですが、黒ずみはいったんつくと手術をしてもなかなか落ちないです。落ちないわけではありませんが、数年はかかります。長い人だと10年くらいはかかります。
じゃあ、手術してもしょうがないじゃないか、と思われるかもしれません。しかし、手術をしないとどんどん色がついていく、痒くなる、潰瘍になるので治るのに非常に時間がかかるようになる上に、ほぼ間違いなく跡が残ります。
以上のことを考えると黒ずみやかゆみがある患者は先読みして手術をしたほうがいいと私は思います。
感動にレベルもラベルもない。
投稿日:2018年3月10日 カテゴリー:日記
表題はバブル時代に一世を風靡した映像作家のお言葉です。
これはまさにその通りだなあと実感しています。
血管外科医の守備範囲・手術は大動脈瘤の破裂という超緊急手術から下肢静脈瘤の日帰り手術までに及びます。ある時は説明もそこそこにせっかちに手術室に運んで緊急手術をする一方で、ある時はお年寄りの足の悩みに耳を傾けます。(たまにせっかちの血が騒いで後悔します。すみません。)
当然ですが、医療は救命優先です。大動脈瘤の破裂と下肢静脈瘤の日帰り手術のどちらを優先するかといえば、破裂の手術です。
一方で、手術が終わった時の患者の喜びにはそれほどの差はないのが実感です。命拾い「まで」した人も足が軽くなった「だけ」の人も精一杯感謝してくれます。そこにはレベルの違いはないのです。
また、手術「まで」受けた人も話を聞いてもらった「だけ」の人も同じように感謝してくれます。
せっかちな私をフォローして患者さんの悩みに耳を傾ける看護師・医療事務の支えがなければクリニックは成立しません。
感謝・感動にラベルはないことを優秀なスタッフから教わりました。スタッフと日々を過ごすなかでつくづくそう思います。
医療従事者として秀でているだけでなく、生活者としての知恵に優れた人達だと思います。
毎日が勉強ですね。