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湘南平塚下肢静脈瘤クリニックブログ

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秋好院長ブログ

暑さと血栓

めちゃくちゃ暑いですね。

あまりの暑さなので涼しいうちに通勤するように心がけています。

 

 

血栓の形成にはウィルヒョウの三要素 (Virchow’s triad)という以下の3つの大きな要因があると言われています。

1.血管内皮細胞の傷害 2.血流の緩慢 3.血液性状の変化

 

このうち、暑さで問題となるのは3つ目の血液性状の変化です。暑さで汗を大量にかくと脱水になります。

そうなると血液中の水分が減少して、血球成分が相対的に増加します。そうなると粘稠度の増加となります。

いわゆる血液がドロドロになるという状態です。(実際にはドロドロとまではなりませんが。)

 

これだけで血栓がいきなりできるということはありませんが、これに加えて、タバコや高脂血症(=1.血管内皮細胞の傷害)、長時間の正座や旅行(=2.血流の緩慢)が加わると血栓ができます。

 

予防方法は簡単です。水を飲めばいいだけです。常に500mlのペットボトルを持ち歩いてのどが乾いたら飲む、ただそれだけです。

これで脱水状態が改善して血栓がかなり予防できるのだからやらないと損です。

 

もう一つは暑い時間帯には家で涼んでいるということです。特に高齢の方はあえて暑い盛りに動く必要はないと思います。

当院でも高齢の方はなるべく夕方に予約を入れるようにしています。

 

静脈瘤の血管を焼いても大丈夫なの? その3

今回は下肢にある太い静脈についてです。

 

下肢の静脈には皮膚表面に分布する表在静脈と筋肉の奥深くを走行する深部静脈に大きく分けられます。表在静脈は皮膚表面を走っていて、皮膚の色が薄い人は透けて見えます。これに対して深部静脈は筋肉の奥深くを走っているので表面からは触れないし、見ることも出来ません。さらに表在静脈と深部静脈は無数の細い血管で交通しています。平行に走る縦の太い線の間を無数の横線がはしるようなあみだくじのような構造を想像してもらえるとよいと思います。

 

さて、この表在静脈と深部静脈の太さにはどれくらいの差があるのでしょうか?かなり個人差はありますが、直径でいうと3倍から5倍はあります。面積でいうと9倍から25倍です。例えれば、表在静脈は1車線の道路、深部静脈は9車線から25車線の道路ということになります。

 

下肢静脈瘤は表在静脈に出来ます。静脈瘤が出来ている表在静脈を焼き潰したり、切除したら、そこを流れている血液はどうなってしまうの?どこを流れるの?というのが一般の方には不思議でならないようです。

 

これは簡単なことで、表在静脈を流れていた血液は表在静脈と深部静脈を交通させている細い静脈を通って深部静脈に流れ込みます。もともと細い血管を流れている血流量ですから大したことはありません。深部静脈で受け止めることは十分に可能です。

 

1車線の道路が渋滞して排ガス問題がひどいからとその道路を潰しても、近くに25車線の道路があれば地域全体としては交通は維持されます。それと同じことです。

 

下肢静脈瘤の術前には必ず超音波検査をします。これは深部静脈が開存していることを確認して、表在静脈を焼いても大丈夫なことを確認しているのです。

足がむくむ、つる、張るという症状について

今回はメール等でお問い合わせがあったことについて述べたいと思います。

 

足がむくむ、つる、張るという症状には様々な原因がありますが、下肢静脈瘤が原因のことがあります。

下肢静脈瘤の本態は伏在静脈や不全穿通枝の逆流による静脈圧上昇です。静脈圧が上昇するとその逃げ道をもとめて、皮膚表面の血流が増加し、表在静脈が拡張して瘤(こぶ)状になります。表在静脈の瘤状拡張はあくまでも二次的なものです。一般の方は外からしか見えないので表面の瘤があるかないかで下肢静脈瘤を判定しがちですが、それは誤りです。専門医はその奥にある伏在静脈や不全穿通枝の存在を超音波検査やCTなどで診断しています。

 

初期の静脈瘤では伏在静脈や不全穿通枝が逆流して静脈圧は上昇していますが、表在血管は拡張していないときもあります。このような時は漠然とした足がむくむ、つる、張るという症状のみが存在しています。また、逆に重症の下肢静脈瘤では皮膚表面の血管拡張がわからなくなることもあります。これは皮膚の炎症が進んで足が腫れあがってマスクされてしまうためです。

 

もちろん上記の症状がすべて下肢静脈瘤のためとは限りません。深部静脈血栓症のときもあるし、腰部脊柱管狭窄症のときもあるし、血栓塞栓症のときもあるし、閉塞性動脈硬化症のときもあるし、膝窩動脈捕捉症候群のときもあるし、膝窩動脈外膜嚢胞のときもあるし、バージャー病のときもあります。肥満や冷え症のときもあります。さらには複数のものが合併している時もあります。血管外科を長くやっているとそれなりに色々なことに遭遇してきているので、拝見しないとなんとも言えないのが率直なところです。

 

次に、仮に初期の下肢静脈瘤だったとして治療の話に移ります。

明らかな伏在静脈や不全穿通枝の逆流が確認され、症状が日常生活に影響を及ぼしている場合には手術を考慮します。多くの場合でレーザー手術で問題ありません。また、初期の場合は手術も短時間で済むことが多いです。うっ滞性皮膚炎などに重症化してから下肢静脈瘤手術を受けに来る方が多いのですが、本当は初期で手術をした方がやる方も受ける方も楽です。

伏在静脈や不全穿通枝の逆流がごく軽度の場合や逆流はあるんだけれど何らかの事情で手術を受けられない場合には手術以外の手段で生活に支障をきたさない対策法を探ります。そのような対策法で満足出来ない場合には改めて手術の可能性を探ることになると思います。

 

伏在静脈や不全穿通枝の逆流が全く無いときは、まずは他の原因を探るのが妥当だと思います。さきほど列挙した別の病気はまた別の詳しい検査が必要になります。これはまったくもってケースバイケースですので、ここではとても書ききれないので割愛します。

 

ざっとさわりを述べるとこんな感じです。こういったことを患者さんが部屋に入った瞬間から観察しながら判断しているわけです。

 

トキより少ない血管外科医

当院は下肢静脈瘤の専門家である血管外科医によって運営されています。

 

血管外科といっても一般の方はほとんど知らないと思います。実は多くの日本の医療関係者も知りません。診療所開設申請の時には保健所の人もしりませんでした。

アレクシス・カレルは血管吻合法と臓器移植の開発に対して1912年のノーベル医学生理学賞を贈られました。欧米ではそれぐらいにメジャーな診療科なんですけどね。

 

日本では色々な理由で血管外科はマイナーな存在でした。自分が血管外科を専攻することになったときには、医師仲間にさえ「それどんな科?何するの?」と聞かれました(T_T)。静脈瘤の専門家だよ、と答えても、「なんだ静脈瘤か」という反応でした。当時はレーザー治療もなく、血管外科医が細々とストリッピング術を施行している状況でした。静脈瘤の患者数にくらべて治療する血管外科医の数が少なすぎて手術まで一年待ちはざらでした。

 

どれくらい少ないのか気になりました。数年前の学会でのアンケート調査では血管外科医を標榜して活動している医師は約200名です。日本で絶滅危惧種といえばトキです。トキより少ないとちょっと不安ですよね。というわけで環境省のページに行きました。http://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/toki.html

結果はなんと、飼育下に202羽、野生下に139羽、計341羽。辛うじて野生のトキよりは多いですが、総数ではトキの方が多い!

 

世界で珍獣といえばパンダ。パンダと比べるとどうなんでしょうか?WWFのページに行きました。https://www.wwf.or.jp/activities/2015/03/1252807.html

パンダは1,864頭!珍獣よりはるかに少ない血管外科医、ということは「珍医」か?がんばれ、血管外科!

 

専門医制度の整備の際にも血管外科医は数が少なすぎて独自の制度を持つことが出来ず、心臓外科と統合して「心臓血管外科専門医」となりました。しょうがないですよね、トキより少ないんだもん。

パンダの子供はニュースになりますが、血管外科医に子供が生まれてもニュースになりません。。パンダが羨ましいです。

 

冗談・愚痴はさておき、今年の目標は血管外科診療所として血管外科診療を地域に定着させること、血管外科における病診連携(病院と診療所の連携)を深化させること、です。楽しみな一年です。

 

 

 

 

クリニック概要

医院名 湘南平塚下肢静脈瘤クリニック
診療科目 内科・血管外科
住所 〒254-0043
神奈川県平塚市紅谷町14-20 FT共同ビル3F
TEL JR東海道・湘南新宿線「平塚駅」北口・西口より
徒歩3分
電話 0463-74-6694
休診日 日曜日、祭日、土曜日午後
診療時間 日・祝
9:00~
12:00
13:00~
18:00

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