秋好院長ブログ
暑さと静脈瘤
投稿日:2018年9月20日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
今年の夏は暑かったですね。と思っていたら急に涼しくなりました。
さて、今回は暑さと静脈瘤の関係です。
夏になると静脈瘤の患者さんが静脈瘤クリニックに殺到します。
皮膚炎や足のだるさなどもやや増悪する印象です。もしかしたら温度上昇による血管拡張なども関係あるのかもしれません。ただし、これについては科学的解明が済んでいないので断言はできません。
一番わかり易い理由は、半ズボンやスカートになると他人に指摘されることが増えるためです。自分ではいくら気にしていなくても、他人様に言われると嫌なものです。
それでは、静脈瘤の手術に一番良い季節はいつでしょうか?これは断言できますが、秋冬です。
当たり前ですが、手術の後にはガーゼや包帯を巻きます。静脈瘤手術の場合には弾性包帯や弾性ストッキング(着圧ストッキング)を使用します。暑いときにはこれが蒸れるんです。それで痒くなることが多いです。ところが涼しくなるとこれがほぼゼロになる。
昨年度はストッキングや包帯の蒸れが高率にありました。そのため、当院の超優秀(本当に!)な看護師二人が研究と改善を重ねて、ほとんど蒸れない方法を確立しました。ただし、それでも今年の夏の暑さは特別で2−3割程度は蒸れがありました。やはり自然には勝てませんと実感しました。
夏の外来でも、休みの事情や潰瘍や皮膚炎など重症で早急にやる必要がある場合を除いて、なるべくは秋冬に手術を受けるように勧めています。1−2月の手術なんか最高です。全く蒸れないし、ストッキングや包帯が温かくてありがたいと言う人すらもいらっしゃいます。
せっかく受診したのになんでそんなにわざわざ待たせるんだと苦情を言われることもあります。お気持ちもよくわかりますが、17年間にわたり、何千人〜何万人も診てきた経験で良かれと思って申し上げていることです。(逆に重症の患者さんで無自覚の方には、蒸れるけどすぐにやったほうがいいとはっきりと申し上げています。)
というわけで、涼しくなって他人様に言われなくなったり、楽になったからとほっておかずにきちんと受診しましょう。重症化してから慌てて手術をするよりも、手術をされる方もする方もはるかに楽です。
「運動不足で寝たきり」を予防するには
投稿日:2018年8月16日 カテゴリー:お知らせ, よくある質問, 日記
当院の短い夏休みが終わりました。
夏は静脈瘤の患者様がたくさんいらっしゃるので、あまり休めないのです。長く休むとその後に殺到してかえって辛くなります。
夏に休まない分を年末年始にしっかりと休むようにしています。その方が効率がいいように思います。
ただ、今年の夏は暑すぎる!出かける気にもならなかったので、冷房の効いた部屋で読書をしたりしてじっとしていました。そういう意味でも短くてよかったように思います。
閑話休題。
今月号のプレジデント誌に寝たきり予防法が掲載されました。著者は院長の慶応義塾大学医学部での同級生でリハビリ科専門で在宅医療でのリハビリ医療に深く関わった速水聰医師です。現在はJAXAで宇宙医療の分野で国際的に活躍しています。
これが非常に理に適っていて、さすがだなと唸らせられるものでした。巷にあふれる健康法はかなり怪しいものが多いのですが、これは間違いなく効果があると思います。
ステルスマーケティングのようで恐縮なのですが、この健康法は足腰に悩む当院の患者様に有益だと判断しました。皆様も暑くて出られない時にはクーラーの効いた涼しい部屋でこの運動を試してみてください。
大伏在静脈と小伏在静脈
投稿日:2018年7月27日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
静脈瘤の原因となる静脈には大伏在静脈と小伏在静脈があります。
外来で患者さんに説明する際によく聞かれますので、今回はメモ代わりにこれについてまとめます。
(他にも不全穿通枝がありますが、これはかなり難しい話になるので、ひとまずはおいておきます。)
大伏在静脈は足首の内側から走行して下肢の内側をずっと登っていって、足の付け根で大腿静脈という太い静脈に流れ込みます。
これに対して、小伏在静脈は足首の外側からふくらはぎの後ろ側に回り込んで、膝の裏側で膝窩静脈という太い静脈に流れ込みます。
大伏在静脈は下肢全長の長さなので「大」、小伏在静脈はふくらはぎの長さだけなので「小」となっているわけです。
手術の観点からいうと、大伏在静脈は仰向けでの手術になります。これに対して、小伏在静脈はうつ伏せでの手術になります。また、大伏在静脈の方が長いので手術時間は長くなりがちです。小伏在静脈の手術だとストレートな形状のものだと5分程度で終了します。(もちろん程度によります。)
一方で、小伏在静脈から生じた静脈瘤の方が足がだるい、重い、つるという症状が強く出る印象です。理由はわかっていません。
このため、小伏在静脈から生じた静脈瘤で症状が強い場合には手術したほうがいいと勧めています。5分程度の手術で症状がよくなるなら、メリットがデメリットを大きく上回るので、手術を止める理由がないです。
もう一つ言うと、静脈瘤全体のうち大伏在静脈からの静脈瘤が8割から9割を占めます。小伏在静脈は2割程度の印象です。このため、専門医以外のドクターは小伏在静脈からも静脈瘤を生じることを「知らない」ことがあります。また、「小」という言葉の印象に騙されて、小伏在静脈からの静脈瘤は大したことないから手術する必要がないとすら思っているドクターも残念ながらいます。
原因不明の足のだるさが治らない、マッサージをしても足が軽くならないといったようなケースでは試しに調べてみてもいいかもしれませんね。
暑さと血栓
投稿日:2018年7月19日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について, 血管外科について, 足のむくみ
めちゃくちゃ暑いですね。
あまりの暑さなので涼しいうちに通勤するように心がけています。
血栓の形成にはウィルヒョウの三要素 (Virchow’s triad)という以下の3つの大きな要因があると言われています。
1.血管内皮細胞の傷害 2.血流の緩慢 3.血液性状の変化
このうち、暑さで問題となるのは3つ目の血液性状の変化です。暑さで汗を大量にかくと脱水になります。
そうなると血液中の水分が減少して、血球成分が相対的に増加します。そうなると粘稠度の増加となります。
いわゆる血液がドロドロになるという状態です。(実際にはドロドロとまではなりませんが。)
これだけで血栓がいきなりできるということはありませんが、これに加えて、タバコや高脂血症(=1.血管内皮細胞の傷害)、長時間の正座や旅行(=2.血流の緩慢)が加わると血栓ができます。
予防方法は簡単です。水を飲めばいいだけです。常に500mlのペットボトルを持ち歩いてのどが乾いたら飲む、ただそれだけです。
これで脱水状態が改善して血栓がかなり予防できるのだからやらないと損です。
もう一つは暑い時間帯には家で涼んでいるということです。特に高齢の方はあえて暑い盛りに動く必要はないと思います。
当院でも高齢の方はなるべく夕方に予約を入れるようにしています。