秋好院長ブログ
緊急事態宣言と下肢静脈瘤
投稿日:2021年3月8日 カテゴリー:お知らせ
二度目の緊急事態宣言が延長されました。
昨年の初回緊急事態宣言ではどう対応するべきか誰もが手探りでしたが、今回は二回目ということもあり、そこそこうまく対応できました。
二回の緊急事態宣言、外出自粛の一年間を通じての感想を述べてみたいと思います。
1.重症例の受診が増えた。
これには2つの可能性があります。一つの可能性は緊急事態宣言・外出自粛では不要不急の受診を控えるので重症例しか受診しないので相対的に上昇したということです。もう一つの可能性は、休業やリモート化によって今まで我慢していた人たちが受診できるようになったということです。これは絶対数の増加です。
2.軽症例が減るわけではない。
政府によって不要不急の受診を控えるように指示が出されましたが、それによって不要不急の受診が減るということはありませんでした。どちらかというと、「医療機関でうつされるのが怖い」と、本来は受診するべき人まで受診を控えてしまったのが現実です。残念ですが、これは下肢静脈瘤に限らず、癌や狭心症や心筋梗塞などでも同様な事例があるようです。
3.閑散期である秋冬に重症例を中心に多数の受診があった。
下肢静脈瘤の相談の7割は夏期にいらっしゃいます。夏には症状が目立つ・ひどくなるためにどうしても夏期に集中します。ところが、今年は閑散期である秋冬にもポツポツと重症例が受診しました。一様に、コロナが怖くて受診を控えていた、本当はもっと早く相談したかったとおっしゃいます。
1.-3.の経験から、手術をするのはワクチン接種後でも構わないと思うのですが、感染者増加が低下している時期を狙って受診・相談は早めにした方がいいのではないかと思います。コロナがすぐに完全ゼロになるとは考えにくいのが現実です。そのような状況のなかで、自身の健康をマネージメントするには、専門医を受診したうえで、対処法等を学んで悪化にブレーキを踏んでおいたほうがよいと思います。
12/24-1/5は休診です。
投稿日:2020年12月23日 カテゴリー:お知らせ
本日をもって2020年の診察を終了しました。
当院の基本方針として、クリスマスと年末年始はスタッフがご家族で心おきなく過ごせるように長期の休みをとります。
普段、ご家族からスタッフをお借りしているわけです。家族が揃う年末年始ぐらいは仕事の心配をせずにゆっくり過ごしてほしいということです。
今年は当院の静脈瘤診療もコロナに大きな影響を受けました。例年だと患者が殺到する春季と夏季はコロナの不安がマックスであったために受診控えが起きました。一方で、夏季に受診を控えた患者の静脈瘤は確実に悪化し、例年なら閑散期となる秋季と冬季にも皮膚炎や潰瘍の患者が多数受診しました。
受診行動にはワイドショーが大きな影響を与えることがわかりました。ワイドショーのコロナ報道が過熱すると受診がピタッと止みます。そして、ワイドショーがコロナ報道に飽きて芸能ネタを始めるとまた受診が増えます。
ワイドショーは公正な科学的な番組ではないし、報道番組ですらもありません。ワイドショーの多くは低俗で、バラエティ番組と大差ありません。
生命や健康を大事に思うのであれば、視聴率目当てのワイドショーに踊らされることなく、きちんと科学的に公平な判断を下していかなければならないと思います。この点については、啓蒙を続けていかなければならないと感じました。
一方で医療機関側にも努力が必要です。現行の仕組みではコロナの恐怖で受診を控えている患者を助けることができません。このため当院ではオンライン診療の本格導入に向けて動き出しました。この点については政府のオンライン診療恒久化の方針が助けになります。緊急事態宣言中にメールでのオンライン診療を開始したのですが、メールというのはなかなかハードルが高いというのが現実のようです。LINEでのオンライン診療を近々開始したいと思います。LINEであれば、より多くの人が簡単に相談できるようになります。しばらく様子をみてよい静脈瘤なのか、早めに手術したほうが良い状態なのかをテレビ電話で判断できます。遠方の患者も気軽に相談できるようになります。
2021年もより良い医療を提供できるように努力を続けたいと思います。
下肢静脈瘤再発について
投稿日:2020年9月11日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤の再発について聞かれることが多くなりました。
今回は下肢静脈瘤の術後再発について考えてみたいと思います。
再発の分類、対処法、当院の方針、と説明していくので今回は長くなります。
「再発」の分類
「再発」分類1. 「再発」ではなく、「新規発生」を再発と患者が表現している場合。
まず最初に述べなくてはいけないのは、「再発」ではそもそもなく、「新規発生」を「再発」と表現している方がとても多いことです。なかには全く静脈瘤と関係ない症状を静脈瘤再発と言っている方もいます。肌感覚としては半分以上がこのグループに入ります。
保険医療では予防的な静脈瘤手術は認められていません。既に静脈瘤になっている血管しか手術をすることは許されていません。一本の足には静脈瘤の原因となりうる血管が複数あります。このうちの既に静脈瘤になっている血管の手術のみが保険でカバーされます。
従って、以前に手術をしたのとは別の血管から静脈瘤が出ることも残念ながらあります。
「再発」分類2. 術式の問題で再発する場合。
10年以上前はストリッピング術しか根治的治療はありませんでした。血管を引っこ抜くということに対する患者側の心理的抵抗は強く、その解決策として高位結紮や硬化療法など外来でできる妥協案的手術が数多く施行されました。これらの治療は当時の医療水準では十分に合理的なものとされ、保険でも認められています。ただ、これらの治療は再発率が高いのが難点であり、いまはあまり行われなくなっています。
「再発」分類3. 機械の限界である場合
レーザーや高周波で焼いた血管は徐々に吸収されていきますが、その途中で再開通することがあります。頻度としては1%以下ではありますが、ゼロではありません。手術中はエコーで血管の太さなどを見ながら焼き具合を調節していますが、血管の性質は人それぞれなので、同じ太さの血管を同じように焼いてもその反応には個人差があります。この個人差が術後の吸収にかかる期間の差や再開通としてでることがあります。
「再発」分類4. 医師の技量が問題である場合。
残念ですが、下肢静脈瘤専門医を名乗っている者のなかには、明らかに血管外科医ではないものもいます。下肢静脈瘤は血管外科医が専門家であることは医師同士では常識であるのですが、血管外科医の人数が少ないことにつけこんで、血管外科医のフリをしているものもいます。一般の方にはわかりません。
外科専門医や心臓血管外科専門医の資格を保持していれば、血管外科医であると考えて差し支えありません。一方で、血管外科医が泌尿器科専門医や整形外科専門医や麻酔科専門医の資格をとることは現行の専門医制度ではほぼ不可能です。経歴や資格の欄で外科や心臓血管外科以外の勤務歴がある場合には疑ってかかったほうがよいと思います。
「再発」に対する対策
「再発」 分類1に対する対策
これはそもそもが「再発」ではなく、患者側の「誤解」です。丁寧に説明するしかありません。これは、術式や術者に関係なく起こりうるので、どうしようもありません。そういう体質・運命だと思って、都度でやるしかないと思います。
「再発」 分類2に対する対策
保険で認められている術式とはいえ、時代遅れで再発率が高い術式は誤解を招くだけなのでやらないのが一番です。また、硬化療法だけで解決する静脈瘤というのは多くの場合で静脈鬱滞症状がないものであり、「見た目だけの問題で、実害がないものに保険(=公金)を使うべきではない」という大原則に反すると考えます。従って、当院ではそもそもやりません。
「再発」 分類3に対する対策
これは医療技術の限界です。例外的な強い出力で再治療をすると多くの場合で解決します。それでもだめな場合にはストリッピング術を行うしか方法がありません。
「再発」 分類4に対する対策
この問題については所管学会である静脈学会、厚労省、中医協、保険組合が問題視しており、対策に乗り出しています。血管外科医の数の少なさを考慮すれば、静脈瘤クリニックのチェーン展開は困難なはずです。グループで複数の静脈瘤クリニックを経営しているような場合には、疑ってかかったほうがよいと思います。
当院での対応の原則
再発に対する対応の原則としては、術前にきちんとCTやエコーで調べることです。CTで不全穿通枝を検索し、伏在静脈の変異を入念に検索することがとても大事です。教科書には定型的な解剖しか書いてありませんが、実は解剖にはかなり変異があるのが実情です。再発にはある程度のパターンがあり、穿通枝などを丹念に処置しておくことが大事です。これだけでも再発率がかなり低くなります。また、再発や新規発生のリスクを事前に伝えることが大事だと考えます。
最も大事なことは、手術適応です。静脈鬱滞症状が強く、生活にすでに支障をきたしているような場合には、再発・新規発生のリスクよりも目の前の症状改善の方が重要です。このような場合には手術を強く勧めます。一方で、無症状や症状軽微であるような場合で、再発のリスクを心配される方には手術を勧めません。静脈瘤が存在することや今後の見通しは伝えますが、手術は勧めないので拍子抜けされることもあるかと思います。それはそれでいいと思います。手術は本当に必要になってからやればいいと思います。
お盆期間の診察について
投稿日:2020年7月25日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について
今年はお盆期間も診察と手術を行います。
現役世代の方でお盆期間に手術を行いたい方は早めの受診をお勧めします。おそらくは手術枠が早めに埋まってしまうと思います。
当院は子育て中の女性が多いので、夏休み期間中は家の子どもたちの面倒をみることを優先にしています。
しかし、今年はコロナ休校の影響で学校の夏休みが短縮されているため、休みをとっても意味がないという結論に至りました。
8/10山の日、8/11火曜日休診は暦通りです。8/12-8/15は診察と手術を行っています。
stay home中の足のむくみについて
投稿日:2020年7月18日 カテゴリー:お知らせ, 下肢静脈瘤について, 足のむくみ
Stay home期間中の足のむくみのために受診する患者さんが増えています。
大別すると理由は以下の2つです。
1.運動不足によるもの
足の静脈の血液は運動時に骨格筋が収縮・弛緩してローラーポンプのように働くことによって心臓に向かって流れます。stay home中は運動が足りなくなるうえに、椅子に座って足を下ろしている時間が長くなるので、足の静脈の血液の流れが悪くなって足がむくみます。
2.体重増加によるもの
足の静脈の血液はお腹の静脈を通って心臓にまで戻ります。運動不足で体重が増えると、内臓脂肪が増えるのでお腹に血液が入っていくのに抵抗が高くなり、足の静脈の血液の流れが悪くなって足がむくみます。
教科書に書いてあるような根本的な解決方法は自宅で運動、自己節制ですが、言うは易しでそんなに簡単なことではありません。
ゴキブリ体操というのを紹介している本もありますが、ゴキブリ体操していたら家事はできません。
現実的な解決方法としては弾性ストッキング(着圧ストッキング)着用となります。
まずは弱圧のハイソックスタイプでよいので、アマゾンや薬局で買ってみて履いてみることを勧めます。
素材としてはマイクロファイバーやコットンがかぶれが少なくておすすめです。どうしてもわからない、医療機関で購入する方が安心という方は予約をとって受診してください。当院の看護師は弾性ストッキングコンダクター有資格者であり、弾性ストッキングについて専門的な知識を持っています。
ストッキングを履いてもよくならない、ストッキングを履いている時はいいけど脱いだ後は足がだるくてたまらない、というような場合には深部静脈血栓症や下肢静脈瘤が疑われます。そのような場合には受診することをお勧めします。検査や専門的な治療が必要になります。