秋好院長ブログ
今年の目標:土曜日手術を始めます。
投稿日:2020年1月4日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 当院での治療例
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
これまでの当院の患者さんは高齢者中心でした。これは神奈川西部という高齢化の進んだ医療過疎圏のためと思われます。東京とはだいぶ異なるようです。
診療所運営に役立つヒントを探るために、同様に高齢化の進んだ韓国や台湾、逆に若年層の多いベトナムを長期休暇を利用して視察し、現地の事情に詳しい方々にいろいろとお話を伺いました。韓国の病院の配置などは病院へのアクセスに悩む神奈川西部の医療事情では参考になりました。また、台湾では少子高齢化の問題に社会全体として積極的に取り組み、妊婦や子連れの家族に対する配慮が日本よりよほど行き届いています。韓国や台湾とは逆に若年層の多いベトナムでは高度経済成長期に確立された日本の保険医療制度が本来想定していたであろう社会の姿を拝見することが出来ました。
詳しいことはここでは書ききれないので結論だけいうと、現役世代の患者にもっと利用しやすい医療環境を作らないといけないと思います。現在の日本の就労環境では、どうしても病気を治すのは定年後になりがちです。特に静脈瘤のように手術が必要な病気ではそれが顕著です。その結果として、重症化してから定年後にようやく手術をする羽目になるというのが今の静脈瘤治療の現実です。
問題解決の第一歩として現役世代の方が治療を受けやすいように土曜日の手術を開始することにしました。これまでも外来は行っていたのですが、手術までは手が回りませんでした。そのために現役世代の方が手術を受けることが出来ないケースがありました。この問題をまず解決したいと思います。
最初は月に1-2回限定でスタートして、軌道に乗ってからは可能であれば毎週としたいと思います。なんとかうまく運んで現役世代の方々が働きながらも医療を受けられるようにしたいです。
手術見学
投稿日:2019年11月29日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 当院での治療例, 日記
今日は技術交流のための手術見学を受け入れました。これまでにも何回か引き受けたことがあります。
もちろん同じ血管外科医師ですし、患者様の事前了解は頂いています。(一般の方の見学は受け付けていません。)
病院、医院同士で技術交流のための見学は一般的で、そうやってよりよい治療が広がっていき、医療の地方格差が解消されていきます。
ビデオでいいじゃないか、という意見もあるかと思いますが、手術は肉体労働ですから手や腕の使い方なども見ますし、どのように道具が配置されているかなども重要です。そういうのはビデオには写っていません。私自身も飛行機で金沢や松山にまで伺ったこともありますし、偉い先生のカバン持ちでお邪魔したこともあります。そういった経験が今の医療に生かされています。
手術見学とは話が異なりますが、医学部を卒業したてのフレッシュマンの頃に当時のご高齢の患者様から「あんた、私の体でしっかり勉強しなさいよ」と言われたことを思い出しました。そういう方はたくさんいました。シミュレーターやビデオがない時代でしたので、本と患者さんから学ぶしかなかった時代です。新米だとわかっていても面子を立ててくれて、上司に怒鳴られた後にカーテンの陰でそっと慰めてくれたり、大部屋のおばちゃん達のアイドルになったりとか。よほど頼りなかったんですね、僕は。。。ほとんど毎日のように上司に怒られていましたが、病院に行くことが辛いと思ったことはなかったです。そうやって可愛がってくれるおじいちゃんやおばあちゃんに迷惑はかけられん、と頑張ったのを思い出しました。
ほとんどの方が鬼籍に入られていると思いますのでお礼することは叶わないのですが、今の姿をみたら少しは喜んでくれるかな、とふと思いました。
足のつりと下肢静脈瘤
投稿日:2019年10月28日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 当院での治療例
「足がつる」という症状で当院を受診する方が増えてきました。
当院は皮膚炎などを伴う重症例や再発例に力を入れていますが、だからといって軽症例は治療しないというわけではありません。
当たり前ですが、重症例が治療できれば軽症例も治療できます。(その逆は必ずしも正しくはないようですが。)
重症例の方によくよくお話を伺っていると、「足がつっていたけどほっといた。そのままほっといたら痒みがでてきた」という方が結構いることに気が付きます。そこで足がつるという方に超音波検査をしてみると、結構な確率で伏在静脈の逆流(=下肢静脈瘤)を認めます。
皮膚炎になってから治療をしても手遅れということではありません。ただし、黒ずみ(色素沈着)や皮膚のえぐれた痕(潰瘍痕)などはどうしても残ってしまいます。また、重症例では軽症例より手間も時間もかかります。
ネットで検索することによって医療知識を得ることが容易になりましたが、一方で誤解も広がりやすくなりました。
下肢静脈瘤では表面の血管のボコボコが目立つので、「血管のボコボコ=下肢静脈瘤」と思いがちですが、厳密にはそれは誤りです。
「伏在静脈の逆流などによる静脈圧の上昇=下肢静脈瘤」であって、「血管のボコボコ」はその症状の一つに過ぎません。
「血管のボコボコ」は写真でわかりやすいので、ネットやテレビではそればかりがクローズアップされるのですが、専門医はその奥を診ています。
「足がつる」というケースでも、その症状によって睡眠や歩行に支障をきたしているような場合には健康保険が使えます。ご安心ください。
下肢静脈瘤手術のベストシーズンはいつか?
投稿日:2018年2月7日 カテゴリー:下肢静脈瘤について, 当院での治療例
患者さんと話しているうえでよく話題になるのが、いつ手術するかです。
夏と冬の手術を比べると冬の手術の方がずっと楽です。
理由1 弾性包帯や弾性ストッキングでかぶれない。
下肢静脈瘤術後は弾性包帯と弾性ストッキングを着用します。夏はこれが暑い!そして、かぶれたり、あせもになります。
どの患者さんも夏は弾性ストッキングの文句をいいます。これに対して、冬は誰も文句を言いません。「寒かったからちょうどいい」という声すらあります。
理由2 混んでない。手術日の融通がきく。
夏になると下肢静脈瘤クリニックは繁忙期に入ります。スカートや半ズボンで他の人に指摘される機会が増えるためです。また、テレビ番組でも特集が組まれることが多いので、テレビを見た方からの問い合わせが急増します。手術の予約どころか診察の予約をするのも一苦労になります。
一般の内科診療所は冬はインフルエンザや風邪でごった返しますが、下肢静脈瘤クリニックは冬はそれほど混雑しません。待ち時間も少ないです。(インフルエンザワクチンやインフルエンザチェックの穴場になるので、それを狙って来る人がいるぐらいです。)
夏になるとどの下肢静脈瘤クリニックも手術待ちが1ヶ月や2ヶ月はあたりまえですが、冬ならば仕事にあわせて手術日の都合もつけやすいです。
理由3 通院が楽。
当院は湘南エリアにあります。夏休みシーズンは行楽客で道路の渋滞があります。
平塚市内や秦野・小田原〜茅ヶ崎の患者さんなら問題はありませんが、それより遠方になると渋滞で一苦労のようです。
遠方の患者さんは冬の間の受診がお勧めです。
理由4 春夏にスカートや半ズボンを履くのに間に合う。
下肢静脈瘤の手術後は軽く内出血します。この内出血は1週間目ぐらいがピークで一ヶ月間でほとんど消えます。見た目だけの問題で痛みはありません。しかし、女性の患者さんですと見た目を気にしますので、この期間は長ズボンを履くようです。
冬の間に手術をすれば、どのみち長ズボンを履いているので内出血は関係ありません。しかも、針穴の傷跡は2ヶ月もすればシミ程度になりますので、血管のボコボコが気になって履けなかったスカートや半ズボンが今年の春夏から履けるようになります。
まとめると、
冬の間に手術が出来る患者さんは冬の間にやるのがおすすめです。
特に、遠方の患者さんには冬の間がおすすめです。渋滞もなく、日程の融通もきくので、通院がとても楽です。
近場の患者さんや弾性ストッキングの暑さが気にならない患者さんはいつでも大丈夫なのかもしれません。その場合でも夏休み期間中等の手術を希望される方は早めの受診で手術枠を予約した方が楽だと思います。
平塚市民病院でワークショップ
投稿日:2017年11月16日 カテゴリー:お知らせ, 当院での治療例, 日記, 閉塞性動脈硬化症について
本日は平塚市民病院で血管内治療ワークショップがありました。
このワークショップは私が市民病院にいた時代に慶応義塾大学医学部放射線科の井上政則先生と屋代英樹先生とで始めたものです。
当時、3人で「平塚市民病院の血管外科と放射線科で世界でも一流の血管内治療を提供しよう」と青臭い野望を抱いて夜昼と無く働き続けました。病院でひたすらに働く一方で、国内学会にも積極的に参加し、ドイツのライプチヒの学会にも参加して世界トップレベルの治療を見学してきました。
そういった活動の一環として国内の一流医師を平塚にお招きして平塚市民病院でワークショップを開催し、手術をやっていただきました。同じ環境で自分達と一流医師がどう違うのか、自分達が整えた環境には何が足りないのかを検討しフィードバックしました。患者さんにはワークショップの趣旨を説明し、協力をお願いしました。皆様にはご快諾をいただきました。遠くまで一流のドクターに会いに行くのが普通なのに、向こうから来てくれるのだから悪い話のわけがありません。
今日は当院から紹介した患者さん二人をワークショップで治療していただきました。
私も自分の手術が終わった後の昼休みにクリニックを抜け出して先生方にご挨拶とお礼に伺いました。
平塚市の医療体制は残念ながら完璧ではありませんが、少しでも良くしようと現場で頑張っている人たちが沢山いることを平塚市の皆様には知っていただきたいと思いました。